(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

「ディール(Deal)」とは、本来、カードゲームでカードを配ることであり、ビジネスの場面では値段や値引き交渉などの「取引」を意味する英単語だが、韓国では「裏取引」というニュアンスで用いられることが多い。

 先日、北朝鮮がウクライナ南東部ドンバス地域の親露派国家、ドネツク人民共和国(DPR)とルガンスク人民共和国(LPR)を正式に国家として承認したことにより、ウクライナが北朝鮮と断交するという事態が生じた。

 同時に、平壌駐在のロシア大使アレクサンドル・マツェゴラがDPRとLPRの再建に、北朝鮮の建設労働者を投入する可能性に言及したことで、ウクライナ戦争における北朝鮮の関与に世界中の関心が集まっている。

 北朝鮮は、なぜウクライナと断交までしてDPRとLPRを国家として承認したのだろうか。また、平壌駐在のロシア大使は、なぜDPRとLPRの再建事業に北朝鮮の建設労働者投入の可能性まで言及したのだろうか。ウクライナ戦争における北朝鮮とロシアのディールに迫ろう。

 事情を知る在ロシア北朝鮮大使館の関係者によると、ウクライナ戦争に関する北朝鮮とロシア間の本格的なディールは3月中旬から始まったという。「ウクライナ戦争開始した当初は、北朝鮮に対するロシアの関心はまったくなかった」と先の関係者は語る。

 当初、北朝鮮に関心がなかったのは、ロシアがウクライナ戦争を速戦即決で簡単に終わらせることができると考えていたからだ。だが、ウクライナ戦争が思ったよりも長期戦になり、北朝鮮の協力が必要だとロシアが切実に感じるようになったのだ。

 興味深いのは、その決断が3月3日に国連で開かれた、ロシアのウクライナ侵攻を糾弾する「国連緊急特別総会」の時だということだ。

 国連緊急特別総会では、193カ国の国連会員国のうち141カ国が支持票を投じ、反対は5票、棄権は35票だった。この時、北朝鮮は棄権票を入れるつもりだった。中国が棄権票を入れたためだ。

 国連駐在の金星(キム・ソン)北朝鮮代表は中国と同じように、ロシアとウクライナ間で綱渡り外交を展開しようと棄権票を投じることにしていた。だが、ロシアが北朝鮮政府に反対票を投じてほしいと強く要求したため、投票の数時間前に北朝鮮政府の立場を、棄権から反対に変更した。

 反対票を投じた5カ国は、ロシア、ベラルーシ、シリア、アフリカ北東部の紅海沿岸の小さな君主国家エリトリア、そして北朝鮮だった。

 これを契機に、ロシアは北朝鮮とのディールの必要性を強く感じるようになった。3月中旬頃、北朝鮮とロシアは、次のようなディールを互いに握ったと先の関係者は語る。