(城郭・戦国史研究家:西股 総生)

敵を防ぐために囲まれた「城」

 城というと、たいがいの人は天守を思い浮かべます。城を訪れる観光客も、まずは天守を目ざして歩きます。でも、城とはもともと、敵を防ぐために囲まれた場所を指す言葉。だから、われわれが城を訪れたとき、最初に出くわすのも石垣や堀です。

 もし、攻めてくる敵が誰もいないのなら、わざわざ手間ヒマかけて、こんなものを築く必要もないですよね。大名のような支配者が暮らすための御殿とか、領地を治めるための政庁だけなら、泥棒や不審者が入ってこないような塀で囲っておけば充分です。

 今の日本だって、国会議事堂や都庁は石垣や堀で囲まれていたりはしません。 地方へ行くと、県庁や市役所が石垣や堀で囲まれている所もあります。でも、それはもともと城だった場所に県庁や市役所が建っているからです。

 諸外国には、政府機関がもっと厳重にフェンスや有刺鉄線で囲まれている所もあります。銃を持った兵士が、目を光らせていたりとか。そういう国は内戦があったり反政府ゲリラが出没したりと、治安のよくない国。つまり、攻めてくる敵がいるわけです。

 日本でも、内戦や反乱がつづいて、治安のとてもよくない時代がありました。今からざっと550年くらい前にはじまった、戦国時代です。戦国時代は150年ほど続き、やがて織田信長や豊臣秀吉、徳川家康によって全国統一が進められます。

 ただし、統一が進むということは、地域ごとのブロックが大きくなってゆくことでもあります。そうなれば、戦争も大がかりになってゆきますよね。当然、敵を防ぐための軍事施設である城も、大きくてとびきり頑丈なものになります。その結果として、姫路城・大坂城・名古屋城・熊本城といった、天下の名城たちが生まれました。