ドラマのトリックにも使用された「封じ手」

 右は、持ち駒の「金」を3五に打った手。左は、6八の「飛車」で6四の歩を取った手。符号なら、右は「▲3五金」、左は「▲6四飛」である。しかし封じ手においては、赤ペンで動かす駒を丸か四角で囲い、その動きを矢印で示す。符号の文字だと、判別つきにくいことが懸念される、という理由のようだ。なお、補足の意味で符号を記してもよい。

 封じ手の2枚の図面用紙に、指し手が何も書いてなかったら、または別々の指し手だったら・・・。現実にはありえないが、殺人事件のドラマでトリックに使われたことがあった。

 俳優の田村正和さんが主演したドラマ『古畑任三郎』シリーズの「汚れた王将」編である。

 あるタイトル戦の挑戦者・米沢八段は、1日目の封じ手を何も書かずに出した。それに気がついた立会人の大石が、当夜に米沢の部屋に行って質した。そして、真相をすべて明らかにすると言う大石を、米沢は灰皿で殴って殺した。その対局場の旅館にたまたま泊まっていた古畑は、米沢の偽装や封じ手に隠されたトリックを暴いていく、というあら筋だ。

藤井聡太の「封じ手」が高額で落札

 昨年の7月に始まった王位戦は、木村一基王位(同47)に藤井聡太七段(同17)が挑戦した。藤井にとって、初めての2日制タイトル戦だった。

 第1局は、木村が封じ手を行った。第2局は、藤井が封じ手を初めて経験した。そのとき、木村の提案で3通の封じ手が作成された。

 九州地方に起きた豪雨災害の被災者を救済する一助として、封じ手の1通をチャリティに当てるという趣旨だった。

 藤井が書いた封じ手の一式は、後日にインターネット・オークションにかけられ、一時は3000万円もの高値が付いた。その後、藤井が初めて経験した第2局の封じ手は、約550万円で落札された。

 また、藤井が4連勝して王位のタイトルを獲得した第4局で書いた藤井の封じ手は、1500万円で落札された。

 タイトル戦での封じ手が、チャリティ目的で販売されたことはあったが、この高額は異例である。

(田丸 昇)