文=渡辺慎太郎

新型Cクラスはフルモデルチェンジ

 メルセデス・ベンツの新型Cクラスはコロナ禍の昨年に本国ドイツでデビューし、日本でも今年6月末に正式発表となりました。日本仕様はガソリンエンジンを搭載するC200アヴァンギャルド(654万円)とC200 4MATICアヴァンギャルド(681万円)、そしてディーゼルエンジンを積むC220dアヴァンギャルド(682万円)の3タイプが用意されています。これまでCクラスはセダンが登場してから1年後くらいにステーションワゴンが追加されてきましたが今回はワゴンも同時発表され、日本仕様はC200ステーションワゴンアヴァンギャルド(677万円)とC220dステーションワゴンアヴァンギャルド(705万円)の2種類から選ぶことができます。

 新型Cクラスはいわゆるフルモデルチェンジで、ほとんどすべてが従来型から刷新されました。注目すべきポイントはエンジンとプラットフォームです。C200は1.5Lの直列4気筒ターボ、C220dは2Lの直列4気筒ディーゼルターボですが、いずれもISG仕様のユニットです。ISGとはインテグレーテッド・スターター・ジェネレーターの略で、簡単に言えばEV走行はできないもののモーターがエンジンをアシストする電動車です。

 新型Cクラスはすべてのエンジンが電動化されていて、将来を見据えたエンジン戦略となっているわけです。そしてプラットフォームはメルセデスのフラッグシップモデルである現行Sクラスと共通。CとSではサイズがずいぶん異なりますが、現代のプラットフォームは設計の自由度が高いので、こうした共有が可能となっているのです。おそらく次期EクラスもCクラス同様にSクラスのプラットフォームをシェアすることになるでしょう。販売価格が高い分だけ開発コストもかけられるSクラスで新しいプラットフォームや先進技術を投入し、それらを下のモデルに随時降ろしていくというのは、メルセデスが昔から行っているやり方でもあります。

ひと足お先にスイスで試乗

 日本には秋頃にやってくるそうで、ひと足お先にスイスで新型Cクラスに試乗してきました。試乗車は日本に来年導入予定のC300eと呼ばれるプラグインハイブリッドモデルです。204ps/230Nmを発生する2Lエンジンと、129ps/440Nmを発生するモーターを組み合わせたシステムで、システムパワーは312ps/550Nmと公表されています。25.4kWhのバッテリーをトランクの床下に積み、EVモードでの最高速は140km/h、航続距離は約100km。トランスミッションは9速ATの9G-TRONICが組み合わされています。

 ボディサイズは全長4751mm、全幅1820mm、全高1438mm、ホイールベース2865mmで、これは従来型と比較すると65mm長く10mm幅広く9mm低くなっています。実物を目にするとそんなに大きくなってはいないように見えますが、背は低くなったなと感じます。写真では「ミニSクラス」のようでもありましたが実際の雰囲気はやっぱりCクラスで、それでも全体的にはより洗練されてエレガントさが若干増しているかもしれません。どちらかと言えば大人っぽい印象が強いスタイリングです。

 インテリアは「ミニSクラス」そのものでした。運転席の目の前にはタブレットのようなメーターパネルが置かれ、センターコンソールにはタッチ式液晶パネルがそそり立っています。機能やグラフィックはSクラスのそれを基本的に踏襲していて、エアコンの操作スイッチも液晶パネル内に収まったため、室内の機械式スイッチの数は最小限となりました。タッチパネルは1度で正確に反応してくれないこともたまにあって、自分のような昭和のおっさんはやっぱりまだ機械式のスイッチのほうがなんとなく安心するし、装備や機能や多いので希望する操作画面までなかなか辿り着けなかったりもします。そんなときは「ハイ、メルセデス」を使ったほうが圧倒的に早く、今後はさらにこうした音声認識システムの利便性が高まるでしょう。昭和のおっさんは実はこの音声認識システムもまだちょっと苦手なのですがもはややむを得ないようですね。

余裕がある限りモーターだけで後輪を駆動

 メルセデスのスタッフが目的を設定してくれたので、ナビゲーションの指示に従いチューリッヒ市街から高速道路へ入り、100km/hの巡航状態となったところで「あれ?」とあることに気が付きました。新型Cクラスはずいぶん車内が静かだなと思っていたのですが、ここまで一度もエンジンが始動していなかったのです。C300eはハイブリッドモードを選ぶと、バッテリー残量に余裕がある限りはモーターだけで後輪を駆動します。つまりずっとEVとして走っていたわけですが、タウンスピードはもちろん高速道路へ入る合流での加速や追い越しなどでも十分なパワーがあって申し分ありませんでした。アクセルペダルの動きに対するパワーの出方がエンジン車に寄せているので、違和感もなくEV走行中であることも意識せず、普通にドライブできたのです。

 エンジンがかかっても吸音や遮音がしっかりされているので、従来型よりも高い静粛性が保たれています。これならEV走行からエンジン走行に変わっても、途端に騒々しくなったとは感じないでしょう。乗り心地は全般的にしっとりとしていて快適です。駆動用の重いバッテリーを積んでいるから車重が重く、これが乗り心地にいい影響を与えているだろうけれど、この新しいプラットフォームとサスペンションであれば、恐らくガソリンやディーゼルでも大きく劣ることはないでしょう。

 日本では充電の環境がまだ十分とは言えないので、EVにはなかなか手を出しにくいかもしれません。でも、航続距離が200〜300kmくらいで常にバッテリー残量を気にしなくてはならないEVよりも、バッテリーが空になってもまったく心配ないプラグインハブリッドのほうが現時点ではずっと現実的であり、自動車の電動化時代への入口として賢明な選択のひとつと言えるでしょう。

(渡辺 慎太郎)