そんな折、一人暮らしをしている佐和子の母が事故でけがをして、佐和子夫婦は同居することに。ちょうど連載が終わったタイミングでの地方移住。不倫もこれで消滅かと思われたが、そうはいかなかった。

 佐和子は新しい連載のテーマに不倫を取り上げようとする。登場人物は佐和子たち夫婦そっくりそのまま。こっそり内容を読んでしまった俊夫は、「バレてしまったのか」と動揺し、思わず千佳に連絡してしまう。結局、俊夫は佐和子の漫画を盗み見たことも、千佳に連絡をとったことも言えず、何より、佐和子が妄想だと主張している不倫のエピソードを本当だと認めることができずに一人で悶々とするしかなかった。そうこうしながら、漫画は次第にエスカレート。そこでは夫に傷つけられた佐和子がいつしか通っていた自動車教習所の教官にほのかな恋心を抱く展開になっていた。

奈緒演じる不倫相手もまた恐ろし

 漫画原作の映画は多いけれど、本作は「漫画」を題材にした全くのオリジナル。劇中、実に効果的に漫画が盛り込まれ、現実か漫画か、リアルかフィクションか、まるでわからない。俊夫の目を通じ、観客も一緒になって、ハラハラさせられる。

「サレ妻」女優といえば、これまで「あなたのことはそれほど」「ホリデイラブ」「恋する母たち」といったドラマで見事な「サレ妻」演技を披露してきた仲里依紗が第一人者だが、今回、佐和子を演じる黒木華の「サレ妻」はその座を脅かすインパクトである。

 豊かな表情で喜怒哀楽を表現する激情型の仲「サレ妻」と違い、何を考えているかわからない、何も言わない黒木「サレ妻」。不倫を知っているのか、知らないのか。夫に対して怒っているのか、あきらめているのか。思いつめた表情で何を言うでもなく、言いかけた言葉を飲み込み、独特の「間」で夫を焦らす黒木「サレ妻」のなんと恐ろしいこと。

 編集者の千佳を演じる奈緒のぶっとんだ女加減も強烈。ドラマ「あなたの番です」でストーカーを怪演し、話題を呼んだ彼女が再び、何をしでかすかわからない、不倫相手としては最悪な女性と化し、俊夫を悩ませる。

 彼女たちの一挙一動にびくびくする夫、俊夫はコメディを通り越して、スリラーの域。柄本佑のおたおたは本物である。