(文:鰐部 祥平)

 海賊ははるか古代より存在する。様々な文化、様々な海域、様々な政治状態、そして様々な民族によって海上での略奪行為は行われてきた。海賊と一言でいっても、その背景には多くの違いがある。だが、古代から現代、洋の東西を問わず、海賊には相反する二つの見かたがある。それは本書帯にも書かれているように「自由を求めるヒーロー」としての姿と「人類共通の敵」としての姿だ。

 例えば「歴史の父」と言われる古代の歴史家ヘロドトスはサモス島の支配者にして海賊王のポリュクラテスを「海上制覇企てた最初のギリシャ人」と呼びその志の高さを賞賛している。一方で古代ギリシャの哲学者キケロは海賊を人類共通の敵として弾劾している。

海賊の始まりから終焉、再登場まで

 本書は時代や人によって常に2つの相対する側面を持つ海賊を古代から現代まで駆け足で概観できる作品である。

 第1章の「海賊の始まり」では古代世界、特に地中海を中心に海賊の成り立ちから、ローマ帝国との関わりを眺める。第2章「海賊の再興」ではローマ帝国の覇権により消滅した海賊が帝国の衰退により復活し、十字軍という軍事活動を通し、中世ヨーロッパ世界とイスラーム世界とでダイナミックに活動していく様を見る。