柑橘類“栄枯盛衰”の中で復権は・・・

 グレープフルーツが輸入される前、1960年代くらいまでは、ミカンの季節が終わり夏が近づく5月ごろには「夏ミカン」が出回った。香りがよく甘味があるが、酸味も強い。それでも柑橘類の好きな日本人には受け入れられた。

 しかし、グレープフルーツが輸入されるようになると、夏ミカンの座は奪われ、消費量や生産量は減った。いまでは店先で昔ながらの夏ミカンを見かけることはほとんどなく、出回っているのは品種改良した「甘夏」ばかりだ。

 1991年に、日米貿易摩擦の象徴的存在だったオレンジの輸入がついに自由化されると、雲行きは変わってきた。たくさんのオレンジが輸入されるようになると、日本のミカンの消費量は減少し、日本の農家は競争力のある新品種の開発に力を入れるようになった。

 気が付けば、店先にはいろいろな品種の柑橘類が並ぶようになり、競争が激しくなった。そして、オレンジのほか、デコポンや伊予柑、清見など華やかなさまざまな柑橘類を横目に、ひっそりとグレープフルーツが置かれている。

 オレンジや新品種のミカンは甘くておいしい。グレープフルーツも改良されているものの、甘いオレンジや目新しい柑橘類に手が出るのは当然だ。グレープフルーツは時代にマッチしなくなってしまったのかもしれない。

 店先に並ぶグレープフルーツを見て、友人が「なつかしい」とつぶやいた。「グレープフルーツ、買う?」と尋ねたら、「買うんだったら、もっと甘いほかの品種を買う」との答え。ジュースや酎ハイなど一定の需要は残るものの、グレープフルーツそのものは過去の果物になりつつある。ある日、気づいたら、夏ミカンのようにグレープフルーツも店頭から消えているのだろうか。

(佐藤 成美)