(鵜飼 秀徳:ジャーナリスト、浄土宗正覚寺副住職)

火葬や埋葬が追いつかないニューヨーク

「死の受け皿」が逼迫している。

 世界最悪の新型コロナウイルス感染地域である米国。直近のニューヨーク市における死者数は累計で1万人を超えるほどだ。これは、あくまでも新型コロナウイルス感染に限った死者数である。

 死者の総数で言えば、コロナウイルス以外の病死や事故死などが加わる。そのため、火葬や埋葬が追いつかず「葬儀崩壊」に陥っていると報じられている。ニューヨーク市では離島に埋葬地を設け、集団埋葬を始めた。

 フランス・パリでも、1日あたりの死者数は800人以上に急増している。コロナウイルス感染による死者数は当初は仏有力紙フィガロに掲載されていた。だが、最近では実数をつかめないほどまで増加しているせいか、ある日を境に掲載されなくなったという。パリ在住のジャーナリスト・永末亜子氏によれば、郊外の卸売市場が遺体安置施設になっている。

「外出禁止措置が取られているので、取材も満足にできない。死の現場が本当はどのような状態なのか、知る術がないのが実情です」(永末氏)

 日本国内では17日現在で死者は148人。東京都内に限れば、56人である。しかし、厚生労働省の専門家チームは、「有効な対策が講じられないまま、コロナウイルスを封じ込められない場合、最悪40万人以上が死亡する」との推計を発表し、衝撃を与えたことは記憶に新しい。

 仮に日本で死者数が爆発的に増加すれば、欧米のような葬儀崩壊は避けられない。現在、わが国における葬送の最前線はどうなっているのだろうか。

24時間以内に火葬された志村けんさん

「新型コロナウイルスに感染されて亡くなった方のご遺体の火葬は、17日現在で1週間待ちの状態です。東京23区における火葬炉のキャパシティ自体は十分なのですが、コロナ関連の死亡者の受け入れをしている火葬場は江戸川区の瑞江葬儀所(都営)や新宿区の落合斎場(民営)などに限られているからです。しかも営業時間外に、防御服を着用した火葬場の職員さんのみで火葬され、遺族は火葬場の敷地にも入れないのが実情です」

 こう明かすのは都内の大手葬儀社の営業担当者だ。

 3月末、お笑いタレントの志村けんさんの、死亡後の措置が象徴的だった。志村さんは、病院で親族に看取られることなく息を引き取り、その後はすぐに火葬。遺骨を抱えた実兄の知之さんがカメラの前に立ち、

「骨も拾うことができないし、顔も見られない」

「本当は盛大に送ってあげたかったのに、こんなことになって悔しい」

 などと心境を明かしていた。志村さんの死から3週間近くが経過し、葬送を取り巻く環境はさらに悪化しているようだ。