睡眠時無呼吸症候群の治療を受けているのはごくわずか

 そういった事態を引き起こす代表的な疾患が、「睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome)」です。

 どこかでこの名前を聞いたことがあるという人も多いと思います。「無呼吸」というのは、睡眠中に呼吸が10秒以上止まることです。また、止まらないまでも、呼吸が異常に浅くなることを「低呼吸」といいます。

 その無呼吸と低呼吸が1時間あたり5回以上起きるものを、睡眠時無呼吸症候群(以下、SAS)と呼びます。

 なぜそんなことが起きてしまうのでしょうか?

 最も大きな原因は、解剖学的に口からのどにかけての気道(上気道と呼びます)が狭くなることです。

 たとえば肥満や、顎が小さいなど骨格の特徴、扁桃腺の肥大、また睡眠中に脱力することで舌がのどの奥へと移動することによって、上気道は狭くなります。その結果、呼吸の流れが悪くなって、無呼吸や低呼吸が起きてしまうのです(これをSASの大部分を占める「閉塞性睡眠時無呼吸」と呼びますが、本稿では分かりやすさを優先して2つを区別しないで用います)。

 また、狭い空間を空気が通ることによって、抵抗が生じて口の中の粘膜が振動し、音がでます。つまり、「いびき」が起きるのです。

 無呼吸や低呼吸によって、慢性的な酸欠状態になってしまうので、睡眠中に脳と身体を十分回復させることができなくなります。たとえ睡眠時間が保たれていたとしても、睡眠の質が非常に低くなり、日中にウトウト眠くなってしまうのです。

 みなさんの周りを見回してみても、肥満気味で、いびきがうるさく、日中ウトウトしがちな人が1人や2人はいるのではないでしょうか?

 事実、SASは決してまれな病気ではなく、日本における有病者数は、なんと900万人もいる(!)と推測されています(1)。そして、そのうちきちんと診断・治療を受けているのは、50万人にも満たないと考えられています。まだまだこの病気は、周知や拾い上げができておらず、「隠れ患者」が相当多いのです。