介入については、早期入院によって早期に行えるようになっただけでなく、「こうしたらいいだろう」という標準的な治療も確立してきました。早期から軽症者向けには必要に応じてファビピラビル(アビガン 抗ウイルス薬)を投与できますし、抗凝固療法(抗凝固薬を用いて血液をサラサラにし、血栓=血のかたまりができるのを予防する治療法)も行えます。病状が悪化しても、前述の酸素マスクによる酸素の早期投与の他、レムデシビル(ベクルリー)やデキサメサゾン(デカドロン)を投与できます。レムデシビルはアビガン同様ウイルスを直接叩く抗ウイルス薬で、デキサメサゾンはステロイド系抗炎症薬(炎症の過剰な状態を抑える薬)です。とくにデキサメサゾンは、ランダム化比較試験で「酸素治療を必要とする比較的重症な新型コロナ感染症患者の死亡率を改善する」というデータが出た唯一の薬です。

 なお、レムデシビルに関してWHO(世界保健機構)は否定的な立場であることが報道されています。しかし、FDA(米国食品医薬品局)や日本集中治療医学会は肯定的な立場を取っています。この違いは、急性呼吸促迫症候群(ARDS)の診療ガイドラインの作成の経験から、解析法や結果の統合法のわずかな違いによるものではないかと推察しています。ちなみに、個人的にも必要に応じて使用しています。

 以上のように、早期発見・早期入院・標準治療の早期介入ができるようになった結果、重症患者数は相対的に減り、重症度も低下したのだと考えられます。

多臓器不全が起こりにくくなった

「重症度が低下した」とは、具体的には、第一波では重症患者の多くが肝不全、腎不全などの多臓器不全を合併していたのに対し、極論すれば、現在は多臓器不全の割合がかなり減って肺だけの単臓器不全となったということです。

 新型コロナ感染症が多臓器不全を起こす理由としては、サイトカインストーム(免疫系の暴走)と血栓症が考えられます(第3回参照)。通常の細菌性の敗血症(=全身の重症感染症)でもサイトカインストームによる多臓器不全が起こり、少なくとも3割程度の患者が死に至るのですが、当初は新型コロナ感染症によるサイトカイン(免疫反応を強める物質)の産生はそれよりも多いのではないかと考えられていました。しかし、現在はサイトカインの産生は細菌性の敗血症ほど多くないことがわかってきて、そのほかの免疫異常も関わっていることが指摘されています。さらに、血管感染と血栓症が多臓器に障害を起こす重要な因子であることもわかってきました。

 新型コロナ感染症に限らず、炎症が強いと血は固まりやすくなって、小さい血管にどんどん血栓が作られていきます(播種性血管内凝固症候群)。それに加えて、新型コロナウイルスは血管内皮細胞(=血管の内面にあって血液と接する細胞)に感染しやすく、血管内皮細胞が壊れ、さらに血栓ができやすい状態になるのです。ひとたび血栓ができると、そこから先の血管に血が流れなくなり、臓器機能の低下が起こります。新型コロナ感染症では、こうした全身の血栓症による多臓器不全が強く現れていると考えられます。

 初期には、新型コロナ感染症による血栓症によって心筋梗塞や脳梗塞などが心配されましたが、通常我々が経験してきた比較的太い血管に血栓が詰まって起こる心筋梗塞・脳梗塞の頻度は当初心配していたほどには高くならないことがわかってきました。