また、炎症による播種性血管内凝固症候群に加えて血管内皮細胞感染による細い血管の血栓症による多臓器不全も、早期からの抗凝固療法、加えて、抗炎症作用があるデキサメサゾンの使用により減っているようです。

 ちなみに、東洋人は欧米人と比べて血栓症を起こしにくいことは医学界ではよく知られています。一般の外科手術で傷を閉じる際、日本の外科医はかなり小さい出血まで電気凝固などで止めるのですが、欧米の外科医はかなりアバウトです。彼らはもともと血が固まりやすいので、止血しないでも出血が止まるからです。今、欧米の病院では、新型コロナ感染症の患者が入院するとすぐに抗凝固療法を始めており、それも世界的な重症度の低下につながっているのだと思います。

 このようにして重症度が低下した=多臓器不全が起こりにくくなったということは、すなわち新型コロナ感染症に感染しても死に至りにくくなったことを意味します。とはいえ、この感染症の怖さがなくなったと考えるのは早計です。

「ごく普通の人」が重症化している

 とはいえ、この感染症の怖さがなくなったと考えるのは早計です。

 どのような人が重症化しやすいかは第一波の時から基本的に変わっていません。高齢者、糖尿病、高血圧、慢性肺疾患などの基礎疾患(持病)を持っている人です。また肥満や喫煙、男性も重症化のリスクと言われています。ただし、われわれ重症患者を専門に診ている医師を驚かせているのは、持病があるとはいってもふだんから旅行に行ったり運動をしたりしているごく普通の人が重症化しているという事実です。インフルエンザでも重症化はしますが、持っている持病の程度がより重い、より高齢、普段の活動性もより低い、「さもありなん」という人であり、新型コロナ感染症で重症化する人は、本来であれば集中治療室には無縁の人なのです。

 また、重症度が低下した現在でも、ECMO(体外式膜型人工肺 第3回参照)を使わなければならない患者が大幅に減ったわけではありません。単機能不全とはいえ肺に重いダメージを負うことが多く、その場合はECMOで肺を休ませなければならないからです。そうなると、退院・社会復帰まで非常に長い時間がかかります。どうやら、治療期間が長いことには変化がなさそうです。同時に、症状が重くなるほど、後遺症も重くなるでしょう。

 一方で、細菌の二次的感染のリスクも指摘され始めています。一般的に免疫が不調になると、細菌感染にかかりやすくなります。さらに、感染に対する強力な防御機構である皮膚に穴を開けて血管に管を入れれば、からだの外にいる菌が皮膚と管のすきまを通って体内に侵入するリスクが高まります。細菌感染症がウイルス感染症後に発症することはよく知られており、とくに季節性インフルエンザではその可能性が非常に高く、早期から黄色ブドウ球菌感染症などで重症化するケースが多いのです。