(高橋 義明:中曽根平和研究所・主任研究員)

 政府が「(時短)効果がでている」と述べていた大阪府も京都府・兵庫県などとともに1月13日に緊急事態宣言の対象地域に加えられることとなった。首都圏1都3県から発令から1週間も経たないうちの急展開である。

 昨年(2020年)末12月25日の第28回大阪府新型コロナウイルス対策本部会議において、大阪府庁は12月11日から患者数が減るシミュレーションを議論していた。ではなぜ政府・大阪府庁は感染爆発の予兆を見逃したのだろうか。この点は、緊急事態宣言を解除する際にも重要になる。本稿ではその原因について検証したい。

(近畿圏での対策についてはここでは触れないが、筆者の考えは近畿圏でも同じである。1月6日の記事「飲食店の時短以上に企業・事業所の休業が必要な理由」を参照いただきたい)。

最大の原因は府庁の透明性に対する消極性

 最大の原因は、11月11日の大阪府本部会議において、全国で唯一、患者情報の個票公表廃止を密かに決定したことにある。

 読者の皆さんはあまりご存知ないかもしれないが、研究者は政府・自治体が持っているデータに簡単にはアクセスできない。筆者が横浜市に提供を依頼した在住外国人調査のデータは入手まで2年間を要した。それは政府の分科会会合に参加している専門家であってもあまり変わらない。

 自治体の場合、研究目的でのデータ提供の公的仕組みは存在しない。そうした中、現在可能なデータの入手方法は3つある。1つ目は自治体がホームページで公表している情報を利用するもの、2つ目は自治体による任意の情報提供、3つ目は行政文書としての情報開示請求である。1つ目の場合でもそのまま分析に利用できることは少なく、PDFから研究者自らがデータ入力したり、自治体ごとに形式がバラバラなために加工するなど人海戦術が必要である。

 1月13日の総理会見に同席した政府・分科会の尾身会長が「新型コロナウイルス感染症特別措置法改正の際に望むこと」として「疫学情報の迅速な収集と共有」を挙げた。欧米の政府・自治体は分析しやすい形でデータを収集・整備し、研究者にかなり自由に提供しており、雲泥の差がある。日本の新型コロナ対策で「科学的知見が少ない」と言われる理由の1つはここにある(詳細は「EBPM(証拠に基づく政策立案)は日本で確立するのか:欧米の経験も踏まえて」参照)。