失踪した元技能実習生のベトナム人に話を聞こうと思い、ツテを頼って、ある「仲介者」に辿り着いた。その仲介者が取材場所として指定したのは東京都江東区内にあるアパートだった。

 そこは築30年超の古ぼけたアパートの一室。インターホンを押して紹介者の名前を告げると、笑顔で出迎えてくれたのはTシャツ、スウェット姿で、まだ表情に幼さの残るベトナム人女性だった。

年収の2倍以上の手数料を払って来日

「コンニチハ」

 カタコトの日本語で挨拶してくれた女性はユキと名乗ったが、むろん本名ではない。なぜ、彼女がユキと名乗ったかは後で説明しよう。

 ユキさんは、受け入れ中止処分を下されたベトナムの「送り出し機関」を通じて、2年半ほど前に来日。彼女が来日費用として、「送り出し機関」へ支払った金額は日本円で100万円以上に上ったという。

 ベトナム政府は、「送り出し機関」が受け取る手数料の上限を約40万円と定めている。だが、その規定が遵守されていないのは彼女のケースを見ても明らかだ。

 ちなみに、ベトナム人の平均年収は約40万円。彼女は、年収の2倍以上の借金を背負って母国を後にしたことになる。

 来日後、ユキさんを受け入れたのは北関東にある会社だったが、とんでもないブラック企業だった。

 ユキさんの話では、来日前に約束されていた賃金は月額20数万円だったが、実際に支払われたのは半額の10万円前後。しかも、そこから家賃や光熱費などの名目で差し引かれて、手元には僅か5万円ほどしか残らなかったのである。