タンパク質AIMはどんな働きをするのか

――宮崎先生が1995年に発見されたタンパク質AIMは、体内でどんな働きをしているのでしょうか。

宮崎徹氏(以下、宮崎) AIMは人間の血液中に高い濃度で含まれているタンパク質です。生きていると体内にいろんなゴミが出ますが、AIMはそのゴミに貼り付いて「これはゴミです、掃除してください」という目印を立てる役割を担っています。AIMが貼り付くとマクロファージなど貪食細胞がゴミをAIMごと食べて掃除してくれるのです。体内のゴミとなるのは死んだ細胞や過剰につくられたもので、脂肪やがん細胞、腎臓が濾過する血液中の老廃物、脳に蓄積してアルツハイマー型認知症の原因になるアミロイドβなどがあります。

――ゴミは脳から腎臓まで、全身にあるのですね。

宮崎 AIMが正常に機能する程度のゴミしか出ていなければ、私たちは健康を保つことができますが、AIMの手に負えないほどゴミが増えてしまったり、AIMがきちんと働かなかったりすると全身にさまざまな病気が出てくる、あるいは病気になっても治すことが難しくなります。

 AIMは血液の中ではIgM(免疫グロブリンM)五量体という大きなタンパク質にくっ付いています。IgM五量体という大きな航空母艦の上にAIMという偵察機が搭載されてスタンバイしているとイメージしてください。敵となるゴミやがん細胞があるとAIMはスクランブルでIgM五量体から飛び立ってゴミにくっつきにいき(活性化)、マクロファージを呼んで掃討するわけです。

 このAIMの働きを発見したのは、脂肪からでした。体内で脂肪が増えすぎるとメタボリックシンドロームとなり様々な病気を引き起こすことはよく知られていますが、その中でも脂肪肝は進行すると予後のよくない肝臓がんになります。

 AIMを持たないマウスに高カロリーのエサを与えるとすぐに太って脂肪肝になり、がんへと進行していくのですが、AIMを投与すると脂肪肝にも肝臓がんにもなりにくく、なった後でも小さくなることがわかったのが2014年頃です。

 普段からAIMは中性脂肪に貼り付いて除去させることで蓄積しないように働いていて、さらにがん化した細胞にも貼り付いて肝臓がんを抑えることがわかったのです。脂肪もがんも除去するのであれば、他にもいろいろな病気に関与しているのではないかと考えました。死んだ細胞などゴミが溜まって悪くなる病気の代表格は腎不全など腎臓の病気です。腎臓では血液の中の老廃物をろ過して尿として体外に流していきますが、尿細管という尿の通り道の最初の部分で老廃物が詰まってしまうと炎症を起こし、腎臓が徐々に壊れてしまいます。

 そこでAIMを試したところ、見事に老廃物や細胞の死骸を取り除いて腎臓病を抑制することがわかりました。細胞の死骸やがん細胞、過剰な脂肪といった体の中にできてくるゴミが溜まりすぎることで病気になり、AIMはそのゴミを取り除いて病気にならないように、また悪化しないように全身で働くタンパク質ではないかと考えるようになりました。

 他にもゴミが溜まる病気としては、先ほども触れた、脳にアミロイドβなどが蓄積して発症するアルツハイマー病があります。もともと脳の中にAIMは存在していません。それでゴミが溜まりやすいのではないかと考え、マウスを使ってAIMを実体顕微鏡下で海馬の近くに投与したり、AIMを作るウイルスに感染させたりしたところ、アミロイドβなどが減少するというデータが取れました。

 脳梗塞も脳内の細胞が死んでしまう病気です。血栓により詰まった血管周辺の脳細胞が死ぬことで炎症を起こすタンパク質が放出され、炎症が広がると7〜10日で脳が腫れたり、正常だった神経細胞が傷ついたりして症状が悪化し脳梗塞の病態になります。この間にAIMを投与すると病態を抑え、生存率や神経症状がよくなることがマウスの実験でわかってきました。現在のところ脳梗塞には有効な治療法はありませんが、AIMを投与することで後遺症を小さくする、また定期的な投与でゴミを取れば予防もできるのではないかと考えています。