入院前に治療制限を選択しなければならない現状

 デルタ株が主流となった第5波の特徴のひとつに、軽症・中等症患者が非常に多いことがあげられます(第60回参照)。これは、高齢者のワクチン接種が進んだ結果、高齢者に比べて重症化しにくい現役世代(20代・30代を中心としたその前後の世代)の感染者が実数・割合ともに多くなっているからだと考えられます。しかし、重症化しにくい世代だとはいえ、これだけ感染者が増えれば、一定数は重症化してしまうのです。

 各社報道の通り、病床逼迫によって、軽症・中等症患者で入院が必要な方、入院したい方が自宅療養を余儀なくされているケースが増えています。その自宅療養中に症状が悪化し、入院できないまま亡くなってしまう方もいらっしゃいます。病床不足は改善しなければならない喫緊の問題です。

 ただし、軽症・中等症の病床を増やして誰でも入院できる体制を整えても、あるいは現状で運よく軽症・中等症病院に入院できたとしても、重症病床が埋まっていれば、重症化した場合に転院して人工呼吸器やECMOなどの高度な治療を受けることは困難です。

 実際、軽症・中等症患者の受け入れに際し、「酸素療法あるいは高流量鼻カニュラ酸素療法(ネーザルハイフロー:鼻に差し込んだ管から酸素を送り込む療法)まではできますが、もし重症化しても人工呼吸器やECMOなどの高度な治療を行える病院には転院できない可能性があります。それを承諾していただけるなら入院できます」と、入院前に承諾を取ることが現実に起こっています。

 患者は自由に治療を選択できる――これが治療の一般原則です。年齢や病前の身体・精神機能に関係なく、患者は、保険診療上許されるあらゆる治療を受ける権利があり、また、患者の最善の利益のために治療が行われなければなりません。