強い使命感を持って動いている医療従事者たち

 この派遣事業を進めるにあたって強く感じたのは、私立の中規模急性期病院の頑張りです。日本の医療体制の特徴は、欧米諸国に比べて医療法人が経営する私立病院が多いことで、その功罪が今さかんに論じられていますが、実際にコロナ診療の第一線では多くの私立中規模病院が非常に頑張ってくださっています。新型コロナウイルスの実像があまりわかっていなかった1年前は及び腰だった面もありますが、現在はやる気満々で、「どんどんやりますからいろいろ教えてください」といった対応で、派遣事業の協力を要請しに行った私のほうが逆にハッパをかけられているように感じられるほどです。

 コロナ患者を受け入れた場合の補助金増額などの施策の影響も否定できませんが、そのやる気はお金だけでは説明がつきません。不慣れな人工呼吸器管理を必死で学び、また院内感染対策の専門家がいない中でゾーニングなどを1から作り上げていく・・・。それを大学病院と比較して1ベッドあたりの医師や看護師が圧倒的に少ない中でやっています。このミッションは、使命感に燃えたスタッフが主体的に動かなければ遂行不能で、長期戦になればバーンアウトする(=燃え尽きる)人が多発するのではないかと心配になります。相対的にマンパワーに恵まれた地域の基幹病院に属する医師として、何かできることをお手伝いしたい。地域病院への人工呼吸支援スタッフ派遣には、そのような気持ちも含まれています。

 外から見ると、1年半続いたパンデミックにおいて、本来の使命を果たしていないかのように見える医療機関があるかもしれません。しかし、私が知る限り、ほとんどの医療機関や医療従事者は強い使命感を持って動いています。一部の病院については、「病院経営のことだけを考えて病床を増やさない悪役」というイメージでの報道がありますが、そんなことはないと私は信じています。

 これは、クリニック・診療所の医師やスタッフについても同じことがいえます。現在はかなりの割合の診療所が発熱外来を設けてコロナの初期診療やPCR検査を行っていますし、ワクチン接種、自療養や宿泊療養患者の診療、後遺症外来でも貢献しています。また、直接コロナ診療を行わない病院も、地域医療を支えています。病気はコロナだけではないからです。

 今や、各レベルの医療現場も行政も、日々綱渡りです。ただ、この綱渡りがなんとかできているのは医療や行政現場のスタッフの献身的な頑張りがあるからだということをぜひ知っていただきたいと思います。

 それでも、われわれの力不足により、入院できずに自宅療養・ホテル療養となっている方がたくさんいらっしゃいます。その方々の苦痛や不安を想像すると、一医療従事者として本当に申し訳ない気持ちで一杯になります。

(8月31日口述 構成・文/鍋田吉郎)

※ここに記す内容は所属組織・学会と離れ、讃井教授個人の見解であることをご承知おきください(ヒューモニー編集部)。

◎讃井 將満(さぬい・まさみつ)
自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長・ 麻酔科科長・集中治療部部長
集中治療専門医、麻酔科指導医。1993年旭川医科大学卒業。麻生飯塚病院で初期研修の後、マイアミ大学麻酔科レジデント・フェローを経て、2013年自治医科大学附属さいたま医療センター集中治療部教授。2017年より現職。臨床専門分野はARDS(急性呼吸促迫症候群)、人工呼吸。研究テーマはtele-ICU(遠隔ICU)、せん妄、急性期における睡眠など。関連学会で数多くの要職を務め、海外にも様々なチャンネルを持つ。

◎鍋田 吉郎(なべた・よしお)
ライター・漫画原作者
1987年東京大学法学部卒。日本債券信用銀行入行。退行後、フリーランス・ライターとして雑誌への寄稿、単行本の執筆・構成編集、漫画原作に携わる。取材・執筆分野は、政治、経済、ビジネス、法律、社会問題からアウトドア、芸能、スポーツ、文化まで広範囲にわたる。地方創生のアドバイザー、奨学金財団の選考委員も務める。主な著書・漫画原作は『稲盛和夫「仕事は楽しく」』(小学館)、『コンデ・コマ』(小学館ヤングサンデー全17巻)、『現在官僚系もふ』(小学館ビックコミックスピリッツ全8巻)、『学習まんが 日本の歴史』(集英社)など。

(ヒューモニー)