(高橋 義明:明海大学経済学部教授)

 新型コロナの新規感染者数は8月20日をピークに減少傾向に転じたとはいえ依然として年末年始の第3波の倍の水準にある。新型コロナ感染事例施設情報を収集するJX通信社によると、7月26日〜8月1日では百貨店、スーパー、コンビニなど「店舗」の占める割合が71.2%と第3波平均の2倍以上に達したという。

 尾身茂・政府分科会会長は人出5割減が達成できないことを受けて8月12日に「百貨店のデパ地下やショッピングモールなど売り場への人出、これを強力に抑制して頂きたい」と提言した。提言を受けた政府の基本的対処方針の正式決定は8月25日だったが、百貨店は8月14日から対応を始めた。政府はあわせてショッピングモールにも法第45条第2項に基づいた入場制限を要請している。緊急事態宣言の期限9月12日が近づく中、本稿ではデパ地下入場制限の効果に焦点を当ててみていきたい。

分科会のこれまでの認識は

 4月25日からの3回目の緊急事態宣言では東京都、大阪府は百貨店にも休業要請を行った。それに対して日本百貨店協会会長(高島屋社長)の村田善郎氏はインタビューで「従業員間の感染も確認されていないし、クラスターも発生していないと聞いている」と述べていた。また、政府分科会委員の小林慶一郎氏もテレビ出演時に「デパートのような本来、買い物するだけでは感染が拡大するリスクは少ない。デパートの立場から見れば乱暴な議論」と述べていた。

 しかし、百貨店やショッピングモールは感染者の発生が当初から目立っていた。

 例えば、昨年(2020年)7月にそごう川口店で食品売り場の従業員9人が感染し、2週間超、全館休館を行っている(朝日新聞2020年7月17日付「そごう川口店、10日間で従業員6人感染 当面全館休業」)。伊勢丹新宿店も同時期に連続してデパ地下で感染者が発生している(ファッションスナップ・ドットコム2020年7月16日付「伊勢丹新宿店で従業員が新型コロナ感染、5日間で4人」)。同じく阪急うめだ従業員の感染も報じられている(日本経済新聞2020年7月17日付「阪急うめだ本店の従業員がコロナ感染 営業は通常通り」)。つまり、政府分科会委員メンバーも感染者がどこで発生しているか、データを確認していないことが分かる。

情報の掲載期間に違い

 百貨店など小売各社は昨年当初から社員などに新型コロナ感染者が発生した場合、その事実をホームページ(HP)で公表してきた。これは顧客や株主、地域社会といった関係者に対して企業の社会的責任を果たすためといえる。