「5m以上」は「建物の2階以上」だが、「20m」は「建物の7階」だ。東日本大震災の被災地での津波の高さは、平地で20mを超えた場所は福島県富岡町(21.1m)という報告が一例あるだけなので、大雨による内陸部の洪水で東日本大震災並、さらに津波以上の洪水まで想定されているとは驚くばかりだったが、真備町はその危険がある場所と知った。

家屋を襲う「洪水」の破壊力

 私が現地入りしたのは洪水発生からおよそ2週間後だったので水はすっかり引いていたが、復旧は容易ではないことを知った。

 高台から見たある住宅は一見、被害がないように思えたが、カメラの望遠レンズで住宅を見ると、破れた2階の窓を通して反対側の開口部から先の外の景色が見えた。2階以上の高さで押し寄せた洪水が、窓を破りすべての家財を流し去ったのだろう。

 51人もの命が奪われたのは、この洪水の力だったのか。

「洪水」は津波のようなパワーで住宅を破壊することもあるのかと思った。

 2020年7月と10月、球磨川の氾濫によって大きな被害が出た熊本県人吉市と球磨村を取材しているが、真備町同様、「洪水」は時に「陸の津波」と言えるほどの破壊力を持っているのは間違いなかった。

 真備町洪水に話を戻す。

 被災から半月後、倉敷市真備支所の前庭では、泥との格闘を終えた多くのボランティアが泥にまみれた長靴を洗うなどの姿が見られた。また、洪水で機能を停止した倉敷市真備支所の内部は東日本大震災の津波取材現場で見た光景と同じだった。

 大雨によって高梁川に合流する小田川が起こす「バックウォーター現象」を防ぐため、現地では河川の改修工事などを国に求めていたが、長いこと国の予算がつかず、また地元の反対があるなど複雑な事情から十分な対策工事が終わる前に大洪水が見舞い51人の命が失われてしまったのだ。