さらに、オミクロンが第5波のデルタに比べて重症化しにくいことも要因のひとつでしょう。デルタでは、ウイルス自体が肺に直接感染して炎症を作り、その炎症が悪化することで呼吸機能が低下して重症化しました。一方、オミクロンは、鼻から喉までの上気道に感染し増殖する傾向があるため、肺炎にまでいたりにくく、重症化しにくいと考えられます。

 実際、現在の重症患者のほとんどは、新型コロナウイルスによる肺炎ではなく、もともとあった基礎疾患が感染によって増悪し、重症化した方です。心機能や腎機能が低下しているため体内に水がたまりやすい心不全患者や透析患者が、オミクロン感染をきっかけに肺に水がたまってしまい、人工呼吸器が必要になるといったようにです。

 もちろん、“重症患者は遅れて増える”ので、油断はできません。一定割合で重症患者は出ますので、新規感染者がこのまま増え続けて母集団が大きくなれば、重症患者も確実に増えるでしょう。とはいえ、世界的に見てもオミクロンの重症化率は低いようです。たとえば、オミクロンで過去最大の流行となったニューヨーク。マウント・サイナイ病院(病床数1134)の野本功一先生(第7回参照)に伺ったところ、第1波では1日あたりの人工呼吸器の最大稼働数が約160台にものぼったのに対し、オミクロンでのICU患者数はピーク時で30人超だということです。

一般救急の受け入れ機能が低下

 以上のように重症病床という側面から見れば医療体制はまだ余裕があるはずなのですが、現実にはすでに逼迫しています。じつは、新型コロナ以外の一般の入院患者診療が非常に大きな影響を受けているのです。

 それが顕著に現れているのが、一般救急の受け入れ機能の低下です。受け入れ先の病院がなかなか見つからない救急搬送困難事案(救急隊による「医療機関への受入れ照会回数4回以上」かつ「現場滞在時間30分以上」)が、埼玉県では1月10〜16日の1週間で727件もありました。これは、第3波の最多473件、第5波の最多466件を上回る過去最悪の数字です。

 東京では、心筋梗塞の80歳代の女性が10か所の病院に断られた後、ようやく見つかった搬送先の病院で入院直後に亡くなるといういたましい事案も発生しました。県内の病院からは、「救急医療が近年まれにみる危険な状態。明らかに第5波より酷く、このままではコロナより多くの犠牲者が出る可能性がある」という悲痛な声があがっています。