オミクロン感染者が増え続けると医療は崩壊

 では、この苦境を乗り切るためには何が必要なのでしょうか?

 病院がやらなければならないのは、病床の柔軟な運用です。一般病床を取り崩して新型コロナ用に切り替えた病床の中には、行政からの受け入れ要請に備えて空いたままになっているものもあるようです。実際にはゾーニングの問題をクリアしなければなりませんが、使っていない病院があるのならば、できるだけフレキシブルに空いている確保病床を新型コロナ以外の患者に使ってほしいと思います。とくに重症病床は、新型コロナの重症患者が少ない今、有効活用すべきですし、現に当院では新型コロナ以外の患者にどんどん使うようにしています。

 この病床の柔軟な運用に関しては、救急搬送困難事案が過去最多となったことを受けて、「新型コロナ用確保病床に新型コロナ以外の救急患者を受け入れることは可能である」という内容の通知が1月20日に厚労省から出されました。しかし、第5波の時に「受け入れ病床が少ない」と大きな批判を受けたことで及び腰になっている病院もあるでしょう。国や都道府県にはより強いリーダーシップを発揮していただきたいと思います。

 ただ、どれだけ柔軟な運用をしても、新型コロナ用病床と一般病床を足した全病床数が増えるわけではありません。このままオミクロン感染者が増え続ければ、その数の暴力によって遅かれ早かれ医療は崩壊します。ですから、もっとも大事なのは、とにかく新型コロナ患者を減らすことです。

 先行する諸外国を見ると、オミクロンは収束も急激です。ワクチンのブースター接種を急ぐと同時に、みなさんには、この2年間続けてきて効果を上げた基本的な予防策(マスク、手洗い、三密回避)を今一度徹底していただくようお願いいたします。

(1月20日口述 構成・文/鍋田吉郎)

※ここに記す内容は所属組織・学会と離れ、讃井教授個人の見解であることをご承知おきください(ヒューモニー編集部)。

◎讃井 將満(さぬい・まさみつ)
自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長・ 麻酔科科長・集中治療部部長
集中治療専門医、麻酔科指導医。1993年旭川医科大学卒業。麻生飯塚病院で初期研修の後、マイアミ大学麻酔科レジデント・フェローを経て、2013年自治医科大学附属さいたま医療センター集中治療部教授。2017年より現職。臨床専門分野はARDS(急性呼吸促迫症候群)、人工呼吸。研究テーマはtele-ICU(遠隔ICU)、せん妄、急性期における睡眠など。関連学会で数多くの要職を務め、海外にも様々なチャンネルを持つ。

◎鍋田 吉郎(なべた・よしお)
ライター・漫画原作者
1987年東京大学法学部卒。日本債券信用銀行入行。退行後、フリーランス・ライターとして雑誌への寄稿、単行本の執筆・構成編集、漫画原作に携わる。取材・執筆分野は、政治、経済、ビジネス、法律、社会問題からアウトドア、芸能、スポーツ、文化まで広範囲にわたる。地方創生のアドバイザー、奨学金財団の選考委員も務める。主な著書・漫画原作は『稲盛和夫「仕事は楽しく」』(小学館)、『コンデ・コマ』(小学館ヤングサンデー全17巻)、『現在官僚系もふ』(小学館ビックコミックスピリッツ全8巻)、『学習まんが 日本の歴史』(集英社)など。

(ヒューモニー)