「焼酎」と聞いて、どのようなイメージを持つだろうか。焼酎は、造り方でいえば、ウイスキーやブランデーと同じ蒸留酒にカテゴライズされる。しかし、飲む時は無色透明で、お燗の程度、アルコール度数、酒の肴など、醸造酒の日本酒にそっくりという不思議な酒だ。さらに、定番の芋や麦をはじめ、変わり種ではワカメなど多彩な原料を使って造ることができるのもユニークな特徴である。

 既に日本酒がありながら、よく似た焼酎がなぜ日本で造られたのか。『焼酎の科学 発酵、蒸留に秘められた日本人の知恵と技』を上梓した、鹿児島大学の鮫島吉廣客員教授に話を聞いた。(聞き手:加藤 葵、シード・プランニング研究員)

──日本のお酒の歴史を辿ると、最初に日本酒が造られましたが、温暖な南国では日本酒造りが難しく、焼酎が造られるようになったといわれています。改めて、焼酎の製造方法の歴史を教えてください。

焼酎で二次仕込みが広がったのはなぜか

鮫島吉廣氏(以下、鮫島):もともと焼酎は、日本酒にならって造られたのが始まりです。日本酒は蒸米、米麹、水を合わせて低温発酵させることで造られますが、九州地方などの温暖な地域では蒸留して保存性を高めていました。

 1700年代、サツマイモが伝来すると焼酎の造り方も大きく変化していきます。サツマイモは蒸すことで糖度が高まり甘くなりますが、酒造りにとっては非常に厄介な性質でした。糖分が増えるとバクテリアに汚染されやすくなり、暖かい地域ではさらに危険性が高まるからです。そこで生まれた製法が、二次仕込み製法と呼ばれる現在主流の焼酎製造方法です。

 この製法は、最初に水と米麹だけで発酵させて酵母を増やし、後から蒸したサツマイモを加えるという造り方です。先に酵母を増やすことで、酵母がサツマイモの糖分を短期間で一気にアルコールへと置換してくれるため、比較的安全に造ることができます。

 また、明治時代の終わりに、沖縄の泡盛に使われていた黒麹菌が焼酎でも使われるようになりました。この黒麹菌は非常にユニークで、レモンや梅干しに含まれるクエン酸を作ることができます。クエン酸によって、雑菌の繁殖を抑えることができ、より安全に酒造できるようになりました。

 さらに都合の良いことに、クエン酸は蒸留しても揮発しません。つまり、蒸留した焼酎の中にクエン酸が入ることはなく、風味を損なう心配はありません。この製造方法は芋のみならず、米や麦など他の原料を使った焼酎造りにも伝播し、現在泡盛をのぞいた焼酎はすべてこの二次仕込み製法で造られています。