少子高齢化と人口減少が進むわが国の社会の質を維持し、さらに発展させるためには、データの活用による効率的な社会運営が不可欠だ。一方で、データ活用のリスクにも対応した制度基盤の構築も早急に求められている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、これまでの経済、社会のあり方は大きく変わろうとしている。

 その中で、日本が抱える課題をどのように解決していくべきか。データを活用した政策形成の手法を研究するNFI(Next Generation Fundamental Policy Research Institute、次世代基盤政策研究所)の専門家がこの国のあるべき未来図を論じる。

 今回は、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーを務めた西浦博・京都大学大学院医学研究科教授とNFI代表理事の森田朗氏によるスペシャル対談の後編。緊急事態宣言解除の裏側や政治と科学の関わり、現在の専門家による助言体制、あるべき感染症対策やコミュニケーションについて、極めて率直に語り合った(過去12回分はこちら)。

首相の解除するかもね発言に「マジでか?」

森田朗氏(以下、森田):提言、助言を上げていったときにうまくいかなかった事例で、印象に残っているものはありますか。私が外から見ていて思ったのは、西浦先生は「80%の削減が非常に重要」とおっしゃっていたのに、その後の総理の記者会見で「7、8割」、その後には6割から8割まで数字が変わっていったことが印象的でした。

西浦博氏(以下、西浦):第1波のときは、どのように感染が伝播していくのか詳細が不確実な中で、他国が都市封鎖で一時的な感染の制御に成功しつつある実態を鑑みて、思い切った接触削減という手を打たざるを得ないという考えが背景にありました。その考えと、政策決断とのせめぎ合いが構造的にあったという。

 困難だったのは解除の議論だと思います。5月16日に39ぐらいの都道府県で緊急事態宣言が解除され、都市部だけが残ることになりました。都市部に関しては、しっかりと定期的に評価をしようということで話を決めてたんですけれど、夜ホテルに帰ってテレビをつけると、首相がその評価する日の翌日を指して、「この日に解除するかもね」と言いながら説明してるんですよ。「マジでか?」って思いながら見ていました。それだけプレッシャーがあったのかなと思います。