政権復帰直後、「民主党政権に協力した」として幹部官僚を次々飛ばした安倍政権

 私が厚労大臣だったとき(2007〜2009年)、優秀な官僚を抜擢して厚労省の大改革を断行した。2009年夏の総選挙で政権が民主党に移り、その後2012年12月の総選挙で自民党が政権に復帰した。民主党政権下でも、私が抜擢した優秀な幹部官僚は大活躍したが、その後を継いだ安倍政権は「民主党政権に協力した」という理由で、彼らを左遷してしまった。その結果、厚労省は幹部に人材が欠け、今回の新型コロナウイルス対策でまともな対応が取れないのである。

 しかし、官僚は国民が選んだ政権に従うのが義務であり、私が大臣時代に活躍した役人たちは、民主党政権下でも職責を果たしたのである。少なくとも医療政策、感染症対策については、民主党政権は舛添大臣の政策を継承したのである。それだけに、この人事は許しがたいものであった。

 安倍政権下での内閣人事局の運営は、忖度官僚を生み、世界に誇ってきた日本の官僚制の土台を腐らせてしまった。

 官僚機構のみならず、自民党の運営にも官邸への権力集中が大きな影響を及ぼしている。好例が、河井克行夫妻の公職選挙法違反疑惑である。人事とカネを握ることによって、党内支配を貫徹させる。立候補する候補者に選挙運動資金として通常は1500万円を支給する党が、河井陣営には10倍の1億5000万円を渡している。

 参議院の広島選挙区には、自民党から現職の溝手顕正議員が立候補したが、彼は安倍を不愉快にさせたことがある。この人物が落選し、河井案里候補が当選することを願っての10倍支給というのなら、私情から出た差別ではないかという疑問が呈されても不思議ではない。これでは、自民党議員もまた官邸の意向を忖度し、総理総裁の茶坊主となるのは当然である。

 しかも、各官庁から派遣される首相の秘書官の在任期間が長すぎた。首相であれ、大臣であれ、秘書官は2年くらいで交代させるのが普通であり、首相や大臣の好き嫌いや好みが考慮されるわけではない。

 ところが、安倍政権の下では、それとは逆のことが行われていた。その結果、選挙で選ばれたわけでもない官僚が異常な権力を持ち、世間の常識も通じなくなってしまったのである。アベノマスク、アベノコラボ、GoToTravelキャンペーンと、失敗例が目の前にたくさんある。

 結局、この人事がコロナ対策の失敗を生み、安倍退陣を早めたのだから皮肉である。その官邸で役人を仕切ってきたのが菅官房長官である。官邸官僚を一掃し、新しい陣容にしないまま継承するのならば、目の前にあるのは政権の失敗である。

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(舛添 要一)