(舛添 要一:国際政治学者)

 9月3日の午前中、自民党の臨時役員会で菅義偉首相は、「コロナ対策に専念したい」として、自民党総裁選に立候補しないことを表明した。「菅内閣製造責任者」たちに詰腹を切らされたような感じだ。黒幕には、腹黒い政治家がいる。6日に予定した党役員人事も行わないことにした。

 ここに至るまでの経緯を振り返ってみたい。

岸田氏の「党役員任期制限」で先手を打たれた菅首相

 8月31日、菅首相と二階俊博幹事長の会談を受けて、菅首相が総裁選よりも前の9月中旬に解散総選挙に踏み切る意向だという報道が流れた。ところが、党の内外で大騒動となり、党内で反対論が続出した。その結果、翌日の午前中に、菅首相は解散総選挙案を引っ込め、総裁選も、9月17日告示、29日投開票という予定通りに行うことを明言した。

 そもそも今回の緊急事態宣言の期限を9月12日までとしたのは、その直後に衆議院を解散する可能性を残すためだった。その計算までは良かったのだが、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、医療は崩壊状態となり、まさに菅首相が言うように、「解散できる状況ではなくなった」のである。

 しかも内閣支持率は、政権発足以来の最低を更新し続けている。20%台という数字も出てきており、政権に赤信号が灯っていた。支持率を上げる要因がないのである。

 コロナ感染者は、首都圏では減少してきており、どうやらピークアウトしたようである。当初は菅首相も、緊急事態宣言は9月12日以降は解除できるという見込みを持ち、それも解散に踏み切る好材料だと考えていたのであろう。

 しかし、感染者数は減っても、重症患者の数は増えており、その状況はしばらく続く見込みだ。また、夏休み明けの学校再開などが引き金となって、感染が再拡大する可能性もある。まだ収束にはほど遠い状況にある。

 そこに岸田文雄前政調会長が総裁選への立候補を表明した。今後、さらに別の候補者が手を挙げるのか、まだ定かではないが、岸田氏が出馬を表明した直後から「菅敗北」の可能性が日に日に高まっていった。「菅首相では総選挙を戦えない」という声が若手を中心に党内から高まっていたからだ。