文=酒井政人 写真提供=アシックス

厚くても軽い、走り出したくなるようなシューズ

 どん底を味わったアシックスが猛チャージをかけている。昨年の箱根駅伝は着用者がまさかのゼロ。しかし、今年は24人まで再浮上させた。

 箱根ランナーを振り向かせたモデルが、昨年3月に登場した「METASPEED」だ。ストライド型の「SKY」と、ピッチ型の「EDGE」の2種類があり、ともにストライド(歩幅)が伸びやすい仕様になっている。

 そして6月14日から発売する「METASPEED+」シリーズのローンチイベントを6月7日に東京・夢の島陸上競技場で開催。新モデルのポテンシャルが明らかになった。

 イベントにはシドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子さんと、METASPEEDを着用して昨年2月のびわ湖毎日マラソンで日本歴代6位の2時間6分35秒をマークした細谷恭平選手(黒崎播磨)が登場。ふたりともピッチ型のランナーだが、高橋さんはピッチ型の「EDGE+」、細谷選手はストライド型の「SKY+」が好みだという。

「私は現役の時からピッチ走法の代表のようなちょこちょこ走りでしたから、EDGEを履かせてもらいました。厚底なので重い感じに見えてしまうんですけど、ビックリするくらい軽いんです。それに緑がとっても鮮やかで、ランニングだけでなく私生活でも履けるようなスタイリッシュな靴だなと思います」と高橋さん。現役時代は薄型シューズが主流だったが、そのなかでも高橋さんはソールが厚めのシューズでマラソンを走っていたという。

「薄型のシューズは軽いんですけど、その分、脚に負担がかかるので後半は辛くなってくる。反対にソールを厚くすれば脚の負担は少なくなるけど、スピードを出しにくい。当時はどちらを取るか、だったんです。私はスピードを捨てても終盤に脚を残しておきたかったので厚めのシューズを履いていました。でもMETASPEED+はソールが厚いのに軽い。脚が持つだけでなく、スピードも出るので、現役時代に履いてみたかったですね」

 高橋さんは今でも時間があれば2時間ジョグをしているというエピソードを披露して、報道陣を驚かせた。一方、学生時代は故障が多かったという細谷選手はMETASPEEDを履くようになって、故障が激減。トレーニングが積めるようになり、結果も出るようになったという。

「このシューズを履くようになって、レース後の疲労感が減り、練習を積めるようになりました。故障で悩んでいる人にもお勧めですね」と細谷選手。普段の練習では4種類のシューズを使い分けており、METASPEEDは〝勝負〟のときに投入している。

「自分のパフォーマンスを100%引き出してくれるシューズなので、あえて秘密兵器的に使っています」と細谷選手。ピッチ走法にも関わらず、レースではストライド型のSKYを履いている理由については、「もともとストライド走法に憧れていて、やりたくてもできなかったのを実現させてくれたのがこのシューズです。実際にレースで何回も使わせていただいたんですけど、ストライドが自然に伸びて、スムーズに進んでくれるです」と独自の履き心地を絶賛した。

 細谷選手は昨年12月の福岡国際マラソンでも2時間8分16秒の日本人トップに輝き、2024年パリ五輪選考会であるMGC出場権の獲得者第1号になった。

 新作となるMETASPEED+には細谷選手のフィードバックも反映されており、「反発性があるのに非常に軽い。今作は足首付近のフィット感もすごい増しているので、走り出したくなるようなシューズです」と感想を話した。

 そして今後については、「海外との差がまだあるので少しでも縮めていき、将来は世界と戦っていきたい。その通過点として、同級生でもある鈴木健吾選手が出した日本記録(2時間4分56秒)の更新を目標にしたいです」と野望を語った。

 バージョンアップしたMETASPEED+は前作よりもクッションフォーム材の「FF BLAST TURBO」が SKY+で約4%、 EDGE+では約16%も増量。カーボンプレートの形状を調整して、ラスト(足形)も一新した。その結果、ランニングエコノミーが2%もUPしたという。靴紐もほどけにくい形状になっただけでなく1g軽くなっている。重さはメンズ27㎝でSKY+が205g、EDGE+210gだ。価格は前モデルと変わらず27500円(税込)になる。

 なおMETASPEEDシリーズはアシックス従来のレーシングシューズと比べるとかなり厚底になる。しかし、アシックス社内では「厚底」とは表現していないという。そこには、他社の厚底シューズとは違うんだというプライドが感じられる。

 筆者もSKY+を実際に履いて走ってみたが、まずは本当に軽い。そしてストライドが自然と伸びる感じがして、気持ちよく走ることができた。この〝感覚〟をぜひ多くのランナーに体感していただきたい。

 なお自分がストライド型かピッチ型なのか分からない場合は、アシックス直営店や、カシオと共同開発したランデバイス「Runmetrix」などで分析できる。またアシックス直営店及び全国の一部販売店ではシューズの試し履きも可能だ。

 6月26日からは市民ランナーのための5000mタイムトライアルレースである「META:Time:Trials Japan Series」の予選会を開催(バーチャルレースは5月24日にスタート。決勝大会は9月24日)。なおアシックスは7月のオレゴン世界選手権をサポートしている。METASPEED+を履いて走れば、世界トップ選手とつながった気分になれるだろう。

(酒井政人)