国防部は7月24日の記者会見ですでに駐軍法に基づいて解放軍が香港の治安回復のために出動する可能性に触れている。また国務院香港マカオ事務弁公室の楊光報道官が8月12日、「香港の過激化するデモが様々な危険な道具を使って警官を攻撃しており、“テロリズム”の萌芽が表れ始めている」と、初めて「テロ」という言葉を使用。デモ隊について「心神喪失の狂気」と表現し、この種の暴力を鎮圧するためには「手加減や情けは無用だ」と激しい警告を発した。

 8月7日には国務院香港マカオ事務弁公室が香港の政財界関係者500人を集めた会議を開催し、香港への対応についての方針を説明した。このときの冒頭で、弁公室主任の張暁明が香港のデモを「カラー革命」(旧共産圏諸国で起きたアメリカ主導の政権交代)に例え、「中央は十分な方法と十分強大なパワーをもって出現し得る各種動乱を平定するだろう」と恫喝。また会議で張暁明が「鄧小平が今の香港で起きている動乱をみたら、きっと北京が干渉する判断を下すだろう」と語っていたと会議参加者が伝えている。これは天安門事件における戒厳令発令と武力鎮圧を成功体験としている習近平政権が、香港で同様の動乱が出現すれば、再び同じ判断を取りうるということを香港関係者に説明したということではないか。

 また、解放軍指揮下にある武装警察の部隊が深センで集結しているという情報が米国情報当局に寄せられていると、トランプ自身がメディアに語っている。実際に、8月9日あたりから深センに武装警察の装甲車や高圧放水車が続々と集結している様子が目撃されており、映像もネットでアップされている。

国際社会が注目する中国の出方

 こういった状況を整理すると、中国共産党内部では、香港のデモを相応の武力を使って一気に鎮圧するという選択肢も視野に入れていれてきているようである。実際、疲労困憊の香港警察だけでは、長引く香港デモに対応する体力がもたないとなると、中国の警察かあるいは軍や武装警察の応援部隊を送り込む可能性は今の段階ではゼロと言い難い。

 だが、そうなると、香港の一国二制度は完全に崩壊する。それどころか、米国はじめ国際社会が対中経済制裁に踏み切る可能性もあり、我々の想像を超える事態に発展しかねない。

 張業明が「カラー革命」に例えていることからもわかるように、党内ではこの一連の香港の問題の背後に米国が糸を引いているとの疑いを持っており、香港問題を米中対立の延長として考えるならば、中国としても簡単には譲歩や妥協ができない。

 中国で現在開催中の北戴河会議(党中央の長老・現役指導部による秘密会議)でも、おそらく香港問題への対応方針は話し合われていよう。会議が終わる今週末、中国の出方が決まるかもしれない、と国際社会は神経をとがらせている。

(福島 香織)