(北村 淳:軍事社会学者)

 前回の本コラム(「米国が一線越えの果たし状、風雲急を告げる南シナ海」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61299)で取り上げたように、トランプ政権は「第三国間の領域紛争には中立を保つ」というアメリカの伝統的外交鉄則の1つを捨て去り、南シナ海における中国、フィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ブルネイそして台湾の領域紛争に関して「反中国」の立場を公的に表明した。

 これに対して中国当局は、「いまごろ4年前のハーグ常設仲裁裁判所の判決など持ち出してももはや何の意味も持たない」と相手にしない強気の態度を表明している。

 たしかにポンペイオ国務長官や連邦議会対中警戒派の議員たちの中国牽制姿勢は「強硬」であるが、外交と両輪をなす軍事に目を向けると、南シナ海における軍事バランスは中国有利に固まりつつあることは否めない。

南シナ海に展開する中国軍戦力

 すでに本コラムで幾度となく触れてきているように、南シナ海のほぼ全域に近い海域(中国が勝手に線引きした不明朗な「九段線」で囲まれた海域)に対する主権的地位を主張している中国は、海南島を足がかりして西沙諸島の永興島に軍事拠点を手にしており、さらに中国から見て南シナ海の果てにある南沙諸島にも7つの人工島を建設して軍事基地群を確保している。