トップクラスの学者たちが集結

 さて8月24日の座談会では、9人の重量級エコノミストが召集され、彼らがおそらく習近平の今後の経済ブレーンであろうとみられている。その顔触れは次のとおりである。

北京大学国家発展研究院名誉教授:林毅夫
中国経済体制改革研究会副会長:樊綱
清華大学公共管理学院:江小涓
中国社会科学院副院長:蔡昉
国家発展改革委員会マクロ経済研究院長:王昌林
清華大学国家金融研究院長:朱民
上海交通大学安泰経済管理学院特任教授:陸銘
中国社会科学院世界経済政治研究所長:張宇燕
香港中文大学(深セン)グローバル当代中国高等研究院長:鄭永年

 この中で注目されるのは林毅夫だ。『中国を動かす経済学者たち』(関志雄著、東洋経済新報社)を参照すると、林毅夫は台湾出身で、現役エリート国民党軍将校時代の1979年に駐屯地の金門島から台湾海峡を泳いで中国に亡命。その後、改革開放後最初に米国留学した中国人留学生組の1人だ。2008年に世界銀行のチーフエコノミストに就任。このときは最初の途上国出身のチーフエコノミストと注目された。

 林毅夫はこれまでも、第11次五カ年計画(2006〜2011年)に組み入れられた新農村運動など、重要な政策を立案してきた経済ブレーンであるが、実は彼が経済学者としての基礎を築いたのは30歳代以降であり、純粋な意味での学者というよりは権力志向が強い。経済学を学んだ目的は「祖国富強」であり、中国が世界経済の中心となる夢を語ってきた愛国者でもあった。その経済政策の方向性は、中国共産党による開発独裁的政策支持であり、憲政体制に移行することが経済の長期的な発展と成功にとって十分かつ必要な条件であるかどうかは疑問である、という立場だ。

 典型的な「御用学者」ではあるが、国際的視野をもち経済理論武装に長けており、これまでも西側社会はずいぶん彼の理論に説得されてきた。

 もう1人、注目されるのは、鄭永年。台湾の評論家の曾志超がラジオ・フリー・アジア(アメリカの政府系ラジオ放送局)で解説していたところによると、鄭永年は北京大学在籍中に、1989年の民主化運動を体験し、その後、米プリンストン大学に留学、博士号をとった人物だが、なぜか近年の発言をみると新左派的人物になっている。西側の普遍的価値観について「侵略性スローガン」と批判し、「中国は今後30年のうちに、共産党の市場混合制経済を検証し、政治上の一党制の内部に多様な混合制を採用することで、過去100年の世界二大(東西)陣営の長所を融合し改善する」と著書『未来30年』の中で主張している。

 さらに、昨年の香港の反送中デモ期間中、鄭永年は人民日報の取材に対し「香港に対して断水するぞと威嚇すれば、デモの乱は終結する」などと発言し、大いに香港世論の反発を招いた。鄭永年は党のすることのほとんどすべてを正当化している。