中でも心配なのは失業率の悪化である。第2四半期の失業率は15.4%と過去20年間で最悪の水準となった。20歳から29歳までの人口が総人口の63%を占めるサウジアラビアでは若者の不満が高まっているだろうが、サウジアラビアの財政均衡原油価格は1バレル=約80ドルである。今年の財政赤字の対GDP比が12%になると予想されていることから、サウジアラビア政府は9月30日、「来年の歳出規模を前年比7.5%減の約2639万ドルにする」と公表した。付加価値税の大幅引き上げにより、8月のインフレ率は6.2%に加速し、個人消費は5.5%減少している(9月30日付ロイター)。補助金のさらなる削減によるガソリン価格の実質的な値上げが検討されている。

 米ロサンゼルス・タイムズは10月2日、「サウジアラビアにおける反対勢力への弾圧は依然として増加傾向にある」と報じた。サウジアラビアの裁判所は10月6日、政府の政策を批判していた経済学者のウサム・アルザミル氏に対し、禁固15年の判決を言い渡した。

 財政状態が急速に悪化しているにもかかわらず、サウジアラビアはイエメンでの軍事介入をやめる気配を見せていない。今年9月以降、イエメンのシーア派反政府武装組織フーシのドローンやミサイル攻撃が増加しており、治安の悪化を招いている。

 脱石油経済化を目指しているものの、海外からの投資が3年連続で減少しており、イスラエル・マネーが喉から手が出るほどほしいだろうが、メッカとメディナという2大聖地の守護者であるサウジアラビアの立場がそれを許さない。UAEやバーレーンのようにはいかないのである。

 建国以来の危機に陥りつつある祖国の現状に影響されたのだろうか、海外亡命中のサウジアラビア反体制派グループは民主的な政治集団を発足させた(9月24日付ロイター)。エジプトやレバノンなどで政府への抗議活動が盛んになっているが、原油価格が今後急落するようなことがあれば、サウジアラビアをはじめ湾岸産油国で「アラブの春」が起こる可能性は排除できないだろう。

 原油価格の下落は国内のガソリン価格を安価にするというメリットがあるが、中東依存度が高い日本のエネルギー安全保障環境を不安定化させてしまうことを忘れてならない。

(藤 和彦)