ポンペオ国務長官が訪韓をやめた理由

──確かに、ポンペオ国務長官は菅義偉首相や日豪印の外相と会談、対中包囲網の構築を盛んに呼びかけました。その背景には何があるのでしょうか。

酒井:「自由で開かれたインド太平洋」は安倍前首相が提唱したものですが、同時に、オバマ政権のピボット戦略(大西洋からアジア・太平洋への主軸の旋回)の延長線上にもあります。コロナ禍で国際協調の形が変化、加速する中、4カ国の協力関係を深化させようとしていることを見せたのが、今回の4カ国外相会合でした。

 米国にしてみれば、一口に「対中包囲網」と言っても、中国の方が先に世界へのプレゼンス拡大をやってきているので、それを包囲することは容易ではありません。また、日本は経済界の意思もあるので、簡単には対中強硬戦略を取りません。その中で、自陣営での立場確立を材料に取り込む意志も米国にはあったでしょう。

 今回のポンペオ訪日と4カ国外相会合は、トランプ政権というよりも、オバマ政権時代から続く新しい時代の潮流を、米国として本腰を入れ始めたというふうに捉えればいいのではないでしょうか。これを一気に動かしていくパワーがトランプ政権にはあると思います。

──ポンペオ国務長官がモンゴルと韓国への訪問をキャンセルしたのはなぜでしょうか。

酒井:まずインド太平洋という海洋戦略に、モンゴルと韓国は関係ありません。また、現在は新グローバル戦略の足腰を強める時期です。

 モンゴルについてはエスパー国防長官が2019年に訪問していますが、ここで中国を真正面から刺激することが得策かどうかと考えたのでしょう。そもそもモンゴルはソ連に近い共産主義国だったわけですから、中国とロシアが接近している中、モンゴルとの関係強化には慎重さが求められるという側面もあると思います。なお、10月9日には茂木外相がモンゴルを訪問して外相会談をしています。ここで、ポンペオ国務長官の意思も伝えられたはずです。

 韓国については、米国のグローバル戦略の中には入らないと思います。朝鮮半島問題で米国にとって重要なことは、北朝鮮を非核化して普通の国にすることです。それに協力するのか、実は相手側に立つのかわからないような国を簡単には信じられないということもあるのでしょう。