SEATOの日本のメリットとは

──SEATOとは耳慣れない言葉ですね。ここには、台湾や東シナ海、南シナ海についてのスタンスはいかがでしょうか。

酒井:これは、1960年にラオスのフォーミ軍司令官と英国のマクミラン首相がSoutheast Asian Treaty Organizationと使ったのが最初です。当時はアジア版NATOで軍事同盟のための名称でした。今回は平和優先ですが、現段階で私が想定した仮称だと思って下さい。

 台湾などについては、中国を明確な敵とするかどうかに関係します。コロナ禍で甚大な被害を受けた米国は今は怒っていますが、やがてそれがどうなるかは見極めが必要です。

 まず、台湾については、着々と独立国としての体裁を築き上げてきました。特に、国家のデジタル化への対応の素早さと、今回のコロナ対応の見事さは世界中が台湾を強く意識したと思います。

 これに対して中国は、絶対に台湾の独立を認めない方針ですが、国民党の馬政権の時のように、国家的独立と両国関係の融合を同時に目指す流れができれば、これも一変するかもしれません。「将来は一つになるが、そのための準備はお互いがする」というような関係があり得ないとは言い切れません。

 そもそも、日本のシーレーンを考えると台湾はとても重要な位置にあります。南シナ海も同じで、様々な国の権益が関係するため、二国間協議ではなかなか答えを出せませんが、国家間連合体となれば、それが可能かもしれません。フィリピンやベトナムもSEATOには賛同するのではないでしょうか。

 従って、中国を敵とする姿勢を露骨に示さずに、将来の中国の参加まで可能性を残したものであれば、上手く行く可能性は十分あると思います。

──日本にとってのメリットは何でしょうか。

酒井:一つにはシーレーンを、国際的な組織で守り合うという点です。現行の憲法下で自衛隊を軍隊にすることが不可能な中、法解釈の変更のみで自衛隊の活動を拡大することにも限界があります。一方、世界の至る所にテロが起きる時代になり、海賊も増えました。そんな中で、インド洋と太平洋の商船の安全航行を保証する国際組織ができることはプラスですね。

 また、今回の4カ国外相会合でも触れていますが、北朝鮮の拉致問題解決への期待です。

 北朝鮮の拉致問題は、結局、日本独自の二国間交渉では進まなくなっており、同じく拉致被害者のいる韓国も日本とは一枚岩にはなりません。米国も支援をしてくれていますが、現実の核の脅威がある中、米国は自国を北朝鮮の核から守ることを優先せざるを得ませんでした。

 こうした中で、SEATOが本格稼働し、シンガポール、インドネシア、ベトナムという北朝鮮と国交を持つ国が仲間になると、複数国によるプレッシャーを与えることが可能となります。

 北朝鮮による拉致被害者の問題は、日本国が独自にも進めるべき国家の問題ですが、同時に多くの国を巻き込んで北朝鮮が拉致被害者を保持し続けないように追い詰めるという戦略は有効だと思います。北朝鮮にとって、それを隠し続けるメリットがないということをしらせるという点からも重要です。