イスラエルとアラブ諸国の国交樹立の意味

──トランプ政権は国際協調路線ではなく、孤立主義、単独主義にシフトしているという指摘がありました。今回のSEATOは再び国際協調を重視する米国に戻るということでしょうか。

酒井:トランプ政権は応分の負担を出し合う協調は否定していません。この安全保障体制は米国の利益にもつながりますし、NATOのように従来のコスト分担を修正するのとは異なり、最初から各国が自分の利益を勘案しながら公平な観点で分担し合うような決め方になると思います。これは、従来の国際協調とは異なる構造です。

──今回の訪日が大統領選に与える影響はありますか?

酒井:イスラエルとUAE(アラブ首長国連邦)およびバーレーンが国交樹立して、サウジアラビアがこの3カ国の商用機の上空通過を認めました。また、レバノンがイスラエルとの海洋国境の確定に動き始めました。すべてトランプ政権の成果です。

 しかし、イラン勢と徒党を組んだと言われる民主党(バイデン候補はイラン核合意への復帰を示唆している)とリベラルメディアが「パレスチナ難民を見捨てるのか」と批判しているため、米国で成果があまり報道されていません。トランプ大統領のノーベル平和賞受賞に対しても、ノミネートされた後に米国の一部から批判のレターが届いたそうです。

 つまり、何でも良いから反トランプという人がいる中で、しかも報道管制のようなことが起こっている中で、これが現職陣営にとってプラスになるかどうかはよくわかりません。また、従来の考え方で国際戦略や地域戦略を考える人が米国にはいまだ多く、4カ国外相会合とSEATOの価値が認められるにはしばらく時間がかかるかもしれません。

──どういう意味ですか。

酒井:米軍がシリアやイランを含めた世界の各地域から減っていくことを、米国の力の低下と指摘する人が非常に多い。彼らは、米軍のプレゼンス低下が地域紛争の拡大につながると批判します。イスラエルとUAEやバーレーンの国交樹立などには、中東情勢の不安定化を加速したと分析する人もかなりいます。

 日本人で米国や中東を専門とする人、また国際問題専門家のような人もそう言っています。彼らにとっては、そもそもトランプ大統領がやることはすべて悪のように感じるのでしょう。在イスラエル大使館をエルサレムに移したことへの評価もそうです。私も、それ自体を否定するつもりはありません。

 ただ、その考え方は、大東亜戦争で航空機部隊を使った真珠湾奇襲攻撃を成功させて対米開戦を始めたにもかかわらず、軍艦同士の戦いこそが海戦だと決めていた大日本帝国海軍のようなものだと感じます。新技術を前提にすると世界がどう変わるかを考えるべきでしょう。

 結局、真珠湾の奇襲に成功した日本では山本五十六連合艦隊司令長官だけが航空戦の技術向上の重要性を理解していたと思われるのに対して、奇襲を受けた米国ではワシントンの本部の認識の遅れを軍人たちがカバーして時代の波に乗りました。現在も、低飛行衛星やドローン、サイバー攻撃&防御を総合活用する時代なのだろうと思います。