第1に、ファーウェイ製品について安全保障上のリスクが指摘されているが、それは疑念であり客観的根拠に基づいていないこと。

 第2に、仮に米国民のすべての日常会話を盗聴される可能性があったとしても、それを安全保障上のリスクと定義することはできないこと。そのため、民生向け同社製品の活用を全面的に禁止するやり方は正当化できないこと。

 第3に、同盟国に対してファーウェイの5G基地局などの製品の使用を禁止することは、相手国に巨額のコスト負担を強いるため、米国と同盟国の関係を弱めること。

 第4に、産業政策の観点から見て、競争力のある外国企業を市場から排除すれば、米国の当該産業の競争力が低下する可能性が高いこと。これは米国の自動車産業が典型例である。

 以上のような論拠に立てば、現在の米国政府によるファーウェイ排除政策を継続することは難しいと考えられるという結論が導かれている。

対中政策の変化には時間がかかる

 もちろん、バイデン政権が成立しても、国内政治のポピュリズムがすぐに修正されるわけではないため、以上のような冷静な視点からの合理的政策方針がすぐに採用される可能性は低い。

 しかし、コロナ禍による経済の停滞が回復に向かい、黒人差別問題などによる社会の分断が改善され、中国および米国の対中政策の効果に関する誤った情報が修正されるといった変化が生じれば、国内政治が安定し、外交に関しても冷静かつ合理的な判断を回復できる可能性は十分ある。

 ただし、国内政治との関係を考慮すれば、米国だけが一方的に対中融和政策にシフトすることは考えにくい。

 相手国の中国も新疆ウイグル自治区の人権侵害の是正、香港国家安全維持法の運用基準の緩和、南シナ海等における安全保障政策展開の調整など、一定の歩み寄りを示すことが必要である。

 そうした歩み寄りが明確な形で示されなければ、米国が中国の姿勢を評価してある程度対中強硬姿勢を修正し、それに欧州諸国、日本等の主要国が同調するといった融和方向への改善は期待できない。

 加えて、もし僅差でトランプ大統領が負ける場合、選挙結果を受け入れることを拒絶する過激なトランプ支持者が全米各地で暴動を起こすことが懸念されている。

 そうなれば、もしバイデン政権が誕生しても、少なくとも1年間は混乱に陥っている内政を立て直すための政策に注力するため、米中対立等の外交問題に本格的に向き合うのはそのあとになると見られている。

 トランプ大統領が再選される場合は引き続き予測困難な状況が続く。

 第2期トランプ政権で中国政策に関わる人材の中国理解は、第1期よりさらに低下すると見られていることもあり、米中関係の改善を期待することは難しいと考えられている。

(瀬口 清之)