安倍前首相は10月24日には、6月に87歳で死去した横田滋さんのお別れの会に参列し、菅首相や加藤官房長官と同席した。滋さんは、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父親である。

 このように、首相を退いてからも精力的に活動を続ける安倍前首相だが、冒頭の下村政調会長が言う「国際的な視野に立った活躍」とは、いったい何を意味するのか? 安倍氏と親しい人物に確認すると、「あくまでも個人的見解」と断った上で、次のように述べた。

「それはズバリ、台湾訪問だろう。首相時代は、中国への気兼ねもあって、台湾訪問はかなわなかった。8月には、李登輝元総統の弔問ということで、森喜朗元首相も訪台し、蔡英文総統と会見しているので、『元首相』が訪台した前例はすでに直近にある。この時は、安倍前首相の実弟である親台派の岸信夫議員がセッティングし、岸氏も同行している。

 安倍氏が首相時代は、安倍首相が中国を担当し、弟の岸氏が台湾を担当していた。その岸氏は菅政権で防衛大臣になり、中国と対峙する立場になった。そこで今度は立場を替えて、安倍前首相が日本の台湾外交を担当していくということだろう」

(参考記事:「岸信夫防衛相」に中国が慌てふためく理由)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62154

安倍前首相が極秘裏に会っていた蔡英文氏

 安倍前首相の「電撃訪台」はあり得るのか? 台湾の民進党関係者に聞くと、期待に満ちた口調で答えた。

「具体的に何か聞いているわけではないが、蔡英文政権としては熱烈歓迎だ。蔡総統とすれば、できれば年内にも訪台してほしいと思っているだろう。

 それは、このところの中国大陸の脅威が尋常でないからだ。(中国)人民解放軍は、明日にでも軍事挑発を仕掛けてきそうな雰囲気だ。台湾としては、アメリカと日本の助力がいまほど必要な時はない。

 だが、アメリカは(11月3日の)大統領選挙の後、選挙結果で揉めて、一時的に台湾防衛がなおざりにされるかもしれない。そんな時、安倍前首相が訪台してくれたら、これほど台湾にとって頼もしいことはない」

 実は安倍前首相と蔡英文総統は、面識がある。蔡総統は、総統就任直前の2015年10月、岸信夫氏の斡旋で来日している。その時、岸氏は蔡氏を、自分と安倍首相の故郷である山口県下関市まで、わざわざ案内している。

 この時、私はある首相官邸関係者から、このような話を聞いていた。

「蔡英文氏の宿泊先を、首相官邸から一番近いザ・キャピトルホテル東急に決めたのも岸信夫氏だった。10月8日昼、ホテル特別室のランチの場に、岸氏は安倍首相を連れてきた。日台合わせて10数人のランチだったが、安倍首相は自分がいかに台湾ファンかを熱く語った。首相を退任したら、ぜひ台湾を訪問したいとも言っていた。

 だがこのランチは、安倍首相の首相動静からは削除され、日本側も台湾側も、一切極秘とした。それは、中国政府に配慮したからだった」

 もしも安倍前首相が「電撃訪台」を準備しているとしたら、この「5年前の約束」を果たそうということなのかもしれない。