ここ数年、各国において極超音速兵器(Hypersonic Weapons)の開発が進んでいる。ハイパーソニックとはマッハ5以上の速度をいう。

 現在、極超音速兵器の開発で米・ロ・中が他の国をリードしている。それに続くのが豪、印、仏、独、日本である。

 大気圏内(地表から100キロ以内)を極超音速で飛行する兵器には、空力加熱から機体を保護する熱防御技術や超音速の気流を燃焼させるスクラムジェットエンジンの開発などの課題がある。

 そのため、実戦配備はまだ当分先になるとみられていたが、ロシアと中国は早ければ2020年には実戦配備することが見込まれている。

 一方、米国は、2010年4月にファルコン「HTV-2」の飛行テストに成功するなど極超音速兵器の開発でロシア・中国を凌駕していたが、これまで極超音速兵器の取得を目指さなかった。

 その理由は、米国はロシア・中国と異なり、極超音速兵器に核弾頭を搭載しないとしている。そのため、爆撃効果が小さい通常型極超音速兵器の必要性・有効性に関して議会などで議論がなされてきたためである。

 ところが、最近の極超音速兵器がもたらす戦略的脅威の増大を受け、米国防総省と米議会は、極超音速兵器システムの開発および今後短期間に配備することに強い関心を示している。

 そして、極超音速関連プログラムの予算を増額した。

 同プログラムの国防総省の2021年度の予算要求は、極超音速ミサイル防衛プログラムの2億680万ドルを含め、2020年度の要求の26億ドルから32億ドルに増加した。

 他方、日本の状況であるが、防衛省は、2018年度に「 極超音速誘導弾の要素技術に関する研究(58億円)」と「島嶼防衛用高速滑空弾の研究(139億円)」について予算措置を行い、実質的に極超音速兵器の2種類の研究開発に着手したと言える。

 ところで、極超音速兵器は、現在のいかなるミサイル防衛システムでも撃墜することはほぼ不可能と言われている。

 これらの兵器のさらなる発展は、我が国の安全保障にとって重大な脅威となることは間違いない。わが国の極超音速ミサイル防衛システムの構築が急がれる。

 本稿は、各国の極超音速兵器の研究開発の状況および米国の極超音速ミサイル防衛システムの構想を紹介し、わが国の極超音速ミサイル防衛システム構築の資とすることを目的とする。

 本稿は、米議会調査局の作成した調査報告書「Hypersonic Weapons: Background and Issues for Congress (2020年8月27日更新)」を参考にしている。