文大統領の北朝鮮への思い入れが判断を誤らせる

 文在寅大統領は、今も北朝鮮のことで頭がいっぱいなのだ。日本に対して、東京オリンピックの機会に「日米南北」による首脳会談を提案した。しかし、北朝鮮は米国との対話には関心があるはずだが、日本や韓国を入れた提案には関心はないだろう。それほど文大統領が夢想するこのプランは現実離れしている。文大統領の熱意にもかかわらず、4カ国による首脳会談の実現性は乏しいと言わざるを得ない。

 もう一つ、文大統領が期待を込めているのは、バイデン大統領の就任に合わせ、「朝鮮半島平和プロセス」が再開されることである。これによって米朝関係をシンガポールの米朝首脳会談時にまで戻し、それに合わせて南北首脳会談、南北協力が実現することを望んでいるのだ。

 しかし、米国のバイデン大統領はトランプ前大統領の政策の多くを否定することから出発している。トランプ氏の金正恩氏とのシンガポール会談は、朝鮮半島問題において、バイデン政権が否定することの最たるものである。

 それでも文在寅大統領は、「朝鮮半島平和プロセス」の再現のため、バイデン米国新大統領との早期の首脳会談を求めている。

 それでバイデン大統領との会談が実現したとしても、最初の出会いで信頼を失えばその後の修復は困難になるであろう。文大統領はその首脳会談で北朝鮮についてどのような発言をしようとするのか。事前の準備なくしてバイデン大統領を説得することはできない。まさか、「金正恩氏の非核化意思は明確だ」などと空言を言うつもりではないだろう。

 何でもトップダウンで、しかも思い付きで政策を取り入れたトランプ前大統領とは異なり、ボトムアップで検討したうえで政策決定するバイデン大統領は、文大統領が望むような反応を示す可能性は極めて低い。

 なにしろバイデン大統領の外交スタッフはオバマ政権時に要職を占めた人が多く、彼らは北朝鮮の行動パターンを熟知している。文大統領の甘い言葉に騙されるような人々ではないのだ。