人権・民主主義を主軸に置いた功罪

「君子豹変する」

「Soft on China」(中国に対して軟弱)とか「Panda Hugger」(パンダを抱きしめる親中派)などと言われてきたジョー・バイデン氏は、大統領になるや対中強硬路線を打ち出した――。

 ニューヨーク・タイムズはじめ主要メディアはそう書きたてた。

 2021年2月4日、米国務省で行った就任後初の外交演説でバイデン氏は、次のように中国を呼んだ。

「中国はわれわれにとって最も手ごわい競争相手だ(China is our serious competitor)」

「米国はヒューマン・ライツ(Human Rights=人間の権利と尊厳)、知的財産権、グローバル・ガバナンス*1(Global Governance=GG、グローバルな統治・管理・支配)で中国と対抗していく」

*1=すでにグローバルに合意している事項を執行させる権力が存在しない場合、一国、一地域に対して影響力を与える問題の解決のために国境を越えた主体が政治的相互作用。

(https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2021/02/04/remarks-by-president-biden-on-americas-place-in-the-world/)

 ドナルド・トランプ前大統領は、当初は訪米した習近平国家主席を厚遇し、「私の親しい、素晴らしい友人」などと言っていた。

 ところが、政権中盤頃からは中国への強硬姿勢を見せ始めた。

 外交も商売と考える「そろばん勘定」から、対中貿易の大幅な赤字解消を目指して一方的な関税引き上げに踏み切った。

 その結果、米中通商戦争を引き起こした。

 新型コロナウイルス感染では中国がウイルスの発生地だと断定し、「チャイナ・ウイルス」「カンフルー」(カンフー=中国拳法とフルー=インフルエンザを掛け合わせた造語)だと中国を非難。

 トランプ氏は、マイク・ペンス副大統領を使って中国共産党、中国人民解放軍を徹底的に批判した。

「タフ・オン・チャイナ」(対中強硬スタンス)は多分に大統領再選を目指す選挙戦略の一環として利用された。

 米国民の7割以上が嫌中感情を抱く中でこの戦略は、「ソフト・オン・チャイナ」の民主党批判には功を奏した。

 選挙選では中国寄り(?)のバイデン氏を揶揄して「Beijin Biden」と語呂合わせたキャッチ・コピーまでSNS上に流した。

 だが、対中外交の実態をみる限り、トランプ氏がレトリックで中国をいくら叩こうと習近平政権はビクともしなかった。そしてトランプ・習近平時代は期限切れとなった。