米バイデン政権の通商政策が固まってきた。中国の人権問題に「最優先で対処する」方針を明確にしており、交渉の切り札として「国境炭素税(国境炭素調整)」を全面に押し出したい考えだ。

 大量の二酸化炭素を排出している中国にとって厳しい状況であり、中国の台頭を抑制できる可能性が見えてきた。だが、炭素税カードが切られた場合、中国と並んで大打撃を受けるのが、先進国では脱炭素にもっとも消極的な日本であることはほぼ間違いない。日本も全力で脱炭素に舵を切らなければ、中国と共に沈むという皮肉な結果になりかねない。

(加谷 珪一:経済評論家)

バイデン政権の対中交渉の切り札は「脱炭素」

 米通商代表部(USTR)は2021年3月1日、バイデン政権の通商政策報告書を議会に提出した。報告書には、中国の人権問題に「最優先で対処する」と明記され、ウイグル問題などに対応するため、通商上のあらゆる措置を講じる方針が示された

 バイデン大統領の本気度は、USTRの新しい代表に、アジア系で対中通商政策に詳しいキャサリン・タイ氏(下院歳入委員会通商担当主席法務官)を指名したことからもうかがえる。

 報告書には「国境炭素調整(いわゆる国境炭素税のこと)」措置の導入も盛り込まれた。これは、二酸化炭素を排出する国で製造された製品に、事実上の関税をかけて米国への輸出を制限するものであり、外国企業の排除、国内の雇用保護、脱炭素政策の実現という3つの課題を同時に達成することが狙いである。国境炭素税は、EU(欧州連合)も導入を表明しており、日本を除く先進各国では導入の方向性で具体的な議論が進んでいる。