韓国の共産主義者が日本語に精通している理由

 金三石氏と金銀周氏は1992年、日本で朝鮮総連および在日韓国民主統一連合(韓統連)の関係者らと接触し、工作金を受け取った容疑などが認められた。金三石氏は懲役4年、金銀周氏は懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けている。

 金三石氏の学歴を見ると、韓国外国語大学ロシア語科を卒業している。これは、左派政党であった統合進歩党の代表、李石基(イ・ソッキ)氏と同じである。

 挺対協は常に、「金三石氏が尹美香代表の夫であることは確かだが、スパイ罪は捜査機関の拷問によって捏造されたものであり、金三石氏と金銀周氏は北朝鮮と何の関係もない」と主張してきた。

 金三石氏と李石基氏の関係についても、「出身大学と学科が同じ先輩と後輩だが、一面識もない」と否定していた。しかし、2012年の挺隊協22周年記念会場で、李石基氏と金三石氏が手を握りしめている写真が公開され、挺隊協側のうそが明らかになった。

 李石基氏は、韓国における主体思想派の代表的な人物である。2013年に内乱陰謀罪などの罪で拘束され、懲役9年の実刑判決を言い渡されて現在服役中。彼の出身校である韓国外国語大学は、1980年代以降、高麗(コリョ)大学と共にいわば「アカ」の巣窟として有名な大学だった。中でもロシア語科が中核的な役割を果たしていた。ほとんどの左翼系書籍の輸入が禁止されていた時代に、ロシア語で書かれたマルクス・レーニン主義の書籍を直輸入して翻訳する作業を担当したことから、学生運動の中心を担ったのではないかと思われる。

 韓国の学生運動は1980年代末まで、ほとんどが日本語とロシア語の左翼系書籍に依存し、意識化作業を進めてきた。

 主体思想や金日成(キム・イルソン)選集のような北朝鮮の書籍は翻訳せずとも読めるが、マルクス、エンゲルス、レーニンなど伝説的な革命家の著作物や、ロシア革命、キューバ革命、毛沢東思想などの不穏書籍は読めない。よって地下組織に入った1年生は全員が日本語を学び、日本語の左翼系書籍を読解しなければならなかった。このような事情を知る人なら、1980年代に大学時代を送りながら日本語のできない私のような者は根っからの学生運動家でなかった、とすぐに見抜くだろう。

 つまり、誰もが自分が学生運動家だったと主張することはできるが、日本語を知っているか知らないかで、その深入りの度合いが分かる。といっても、全日制高校を卒業したのか、高等学校卒業程度認定試験を受けたのか、程度の差であるが。