(譚 璐美:作家)

 2021年3月12日、アリババ系列の中国金融サービス企業「アント・グループ(螞蟻集団)」のCEO(最高経営責任者)の胡暁明(サイモン・フー)氏が辞任した。胡氏の希望で、今後はアリババとアントの公共福祉事業を行うという。なにゆえ最先端のフィンテック企業のトップの座を降りて公共福祉事業に取り組むのか。

 日本で高齢化が大きな社会問題になっているが、実は中国でも今後の経済成長を阻むほどの規模とスピードで高齢化が進んでいるのだ。

6年後には「人口減少社会」へ

 中国が高齢人口7%を超えて高齢化社会に入ったのは1979年。それ以来、高齢人口は増え続け、中国民政部が2020年10月に発表した統計によれば、「2021〜25年までの5年間に60歳以上の高齢者の人口は3億人を超える」とされ、2022年の段階で、総人口に占める65歳以上の割合は、早くも15%以上になると予測されている。

 国連統計も、中国の急速な増加スピードを裏付けた。国連予測では、1999年〜2020年の世界高齢人口の年平均増加率は2.5%だが、中国の増加率はそれより速い3.3%で、2020年に1億6700万人に達し、世界の高齢人口の24%を占めるに至った。

 その一方、中国のシンクタンクである社会科学院は、2019年1月、少子化により「人口減少は早ければ2027年から始まる」と予告した。

 高齢化と少子化による人口構成のアンバランスは、毛沢東時代の「一人っ子政策」によってもたらさせた負の遺産だ。それに気がついた中国政府は、2016年から「二人っ子政策」の実施を決定したが、経済成長した中国では物価が高騰し、多くの国民は住宅ローンや医療費、教育費などを抱えて、「産めても養えない」という不安から出生数が増えず、2019年の出生率は、1949年以来の過去最低を記録した。

 中国の高齢化の特徴は増加スピードばかりではない。女性が男性よりも多いのだ。特に80歳以上の女性人口の割合は男性より50〜70%も多い。そしてなにより深刻なのは、経済成長を上回るスピードで高齢化が進んでいることである。