(北村 淳:軍事社会学者)

 台湾国防部によると、本年(2021年)4月だけで中国軍航空機による台湾の防空識別圏への侵入は107ソーティー(Sortie:作戦機1機による1任務1回の出撃)を数えた。本年1月から4月では283ソーティーにのぼっており、すでに昨年の75%に達している。

 中国軍機による台湾ADIZ(防空識別圏)侵入は主として対潜哨戒機による南西部のバシー海峡上空方面に集中している。これは、アメリカ海軍潜水艦が西太平洋から南シナ海に侵入する際にはバシー海峡海中を通過するため、中国側はバシー海峡での対潜能力を向上させるため頻繁に同空域に対潜哨戒機を接近させていると考えられる。

 ただし、最近はH-6Kミサイル爆撃機ならびに戦闘攻撃機のADIZ侵入回数が増加している。バシー海峡を通航する米海軍水上艦を対艦超音速巡航ミサイルで攻撃するデモンストレーションを実施し、米海軍を牽制しているものと思われる。

台湾に対する疲弊作戦

 もちろん、中国軍機の執拗な台湾ADIZ侵入は、一義的には台湾への軍事的威嚇とりわけ台湾空軍への疲弊作戦ということができる。これは東シナ海方面で航空自衛隊に対して継続しているものと同じで、長期にわたってADIZ侵入や接近を執拗に繰り返し、台湾軍戦闘機や自衛隊戦闘機にスクランブルを強い続けることにより、台湾空軍と航空自衛隊のパイロット、整備要員、そして機体を疲弊させる作戦である。そうした疲弊作戦は、空中戦のような戦闘ではない以上、何といっても手持ちの航空機の数が決め手となる。