すなわち、強力な中国軍を相手にする戦略として、いわゆる「第2次世界大戦スタイル」の強襲上陸作戦(自軍の多大な犠牲を前提にし、敵の待ち構えている海岸線に突入して橋頭堡を築き、後続してくる増強部隊と共に内陸に侵攻する)を基幹に据えた戦略は捨て去り、第一列島線上の迎撃適地に地対艦攻撃能力と防空能力を身につけた戦闘部隊を緊急展開させて、米艦艇や航空機と連携しながら、中国艦艇や航空機を攻撃する、という接近阻止戦略に変更したのだ。

 このような米海兵隊による接近阻止戦略は、強力な米国海洋戦力が東シナ海や南シナ海を中国沿海域に接近してくるのを阻止するために中国軍が打ち出した戦略である。逆にその戦略を米国も採用せざるを得なくなってしまったのだ。

対艦ミサイルの配備は間に合うのか

 米軍だけでなく、強力な中国海洋戦力と対決する可能性がある国々にとっては、中国海洋戦力を圧倒するだけの海洋戦力を保持していない限り、接近阻止戦略の採用はもはや常識と言っても過言ではない。台湾軍が接近阻止戦力の大増強に躍起になっているのは、戦略的には極めて正しい方向性といえよう。

 しかしながら、自国も多数の地対艦ミサイルを手にすることが必要になってしまった米国側の事情によって、台湾陸軍がアメリカ製地対艦ミサイルシステムの運用を開始できるのは2027年を待たねばならない。台湾海軍がハープーン地対艦ミサイルシステムを展開させるのは2028年になる模様だ。

 このような状況のため、たとえ台湾国産の地対艦ミサイルの生産が加速されたとしても、強大な中国海軍の侵攻を抑止するのに必要な2000発近くの対艦ミサイルを配備するにはかなりの年月を要することになってしまう。その間、中国共産党政府が台湾への軍事攻撃を凍結し続けてくれる保証は全くない。

(北村 淳)