(北村 淳:軍事社会学者)

 バイデン大統領がアフガニスタンからの米軍完全撤退を急がせた結果、アメリカならびに協力諸国の市民・軍隊・外交団のアフガニスタンからの「撤収」、加えてそれらに協力したアフガニスタン市民たちの「退避」は、逃亡劇のような醜態を国際社会に晒すことになった。

 この無様な姿は、バイデン政権の意思決定や外交当局ならびに軍当局の情報分析などによって引き起こされたものであるが、アメリカ軍はあたかもそれを実行した主役とみなされてしまっている。そのため、現役・退役のアメリカ軍関係者たちの多くが、「国際軍事コミュニティーの中で今後10年以上にわたって蔑まれることを覚悟しなければならない」として憂慮と怒りを露わにしている。

軍首脳への“叛乱”

 アフガニスタンでの米軍「撤収」に伴う混乱状況について、多くの米軍関係者が、バイデン政権のみならず、国防長官オースティン退役陸軍大将ならびに現役軍人の最高位で直接大統領に軍事的助言を与える統合参謀本部議長ミリー陸軍大将たち米軍最高首脳陣に対する批判を強めている。軍隊による計画的な撤収などと呼べる状況からはほど遠い「敗北した戦線からの逃亡」に他ならないという批判である。

 現役・退役の将官や将校の間からは、「大統領に媚びへつらう能力にしか長けていない」といった類いの、国防長官および統合参謀本部議長に対するかなり個人攻撃的な言動も発せられ始めた。そのため米軍首脳部は「軍法に則り、軍内部の上部指揮命令系統だけでなく、大統領、副大統領、国防長官を含む閣僚、連邦議会、州知事や州議会などに対して侮辱的言動をなしてはならない」との警告を発した。