インフレが加速しているトルコで、中央銀行が利下げするというサプライズが起きた。インフレが高進している中、金利を引き下げればインフレがさらに進む可能性もある。金融政策を引き締めるのではなく、逆に、緩和したのはなぜか。政治が中央銀行に圧力をかけ続ける国の末路──。

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 インフレの加速に歯止めがかからないトルコで、中銀が9月23日の金融政策委員会(MPC)で利下げを行うというサプライズが生じた。政策金利(一週間物レポ金利)を1ポイント引き下げ、年18%としたのである。この決定を受けてトルコリラは売りが先行し、9月30日には1ドル8.9557トルコリラと史上最安値を更新した。

 9月のMPCに先立つ9月8日、トルコ中銀のカブジュオール総裁はドイツのトルコ商工会議所での講演で、トルコの金融政策スタンスは十分引き締め的であり、今後はインフレ率が低下していくという見通しを示していた。とはいえ、9月のMPCでトルコ中銀が本当に利上げを断行すると予想した市場関係者はかなり限られたようだ。

 トルコの最新9月の消費者物価(CPI)は総合ベースで前年比+19.6%まで上昇した(図)。一方、食品やエネルギーを除いた変動が大きい項目を除いたコアベースでは17.0%と上昇率は横ばい圏で推移している。カブジュオール総裁は先のドイツでの講演で、金融政策の運営に当たって、このコア指数を重視する方針を示している。

【トルコの金利と物価】

 トルコはエネルギーのほとんどを輸入に頼っているため、最近のエネルギー価格の高騰が物価の上昇を促している側面は否めない。そのため後解釈になるが、エネルギー価格の影響を除いたコア指数ベースで上昇していなければ、利下げは肯定できるというのがカブジュオール総裁のドイツの講演での発言の真意だったのかもしれない。

 なお、トルコのインフレ指標に関しては、その信頼性に関する疑義がついて回る。トルコの経済学者らの推計によると、実際のインフレ率は公表されている水準の倍は下らないようだ。そうした推計の妥当性はともかく、トルコのインフレ指標の信頼性は内外で非常に低く、CPIよりもかなり高い政策金利を定めないと市場の信認は得られない。