9月7日、金正恩総書記の最側近である李炳哲・党中央常務委員会委員が解任され、代わりに朴正天・総参謀長が抜擢されたことが明らかになった。ミサイル開発の中心人物とされ、最側近と見られていた李炳哲氏はなぜ失脚したのか。脱北者でNK知識人連帯代表の金興光氏が報告する。

◎金興光氏の過去の記事はこちら(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%87%91+%E8%88%88%E5%85%89)をご覧ください。

(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)

 北朝鮮の労働新聞と中央通信は9月7日、金正恩総書記の最側近である李炳哲・党中央常務委員会委員が解任され、代わりに朴正天・総参謀長(韓国軍の合同参謀議長に相当する)が抜擢されたことを伝えた。これにより、今年6月29日に開催された朝鮮労働党政治局拡大会議(8期第2次)で言及された、側近更迭の詳細が確認されたことになる。

 9月7日の報道の前に、朝鮮中央通信をはじめ北朝鮮メディアは、先の政治局拡大会議(8期第2次)で重大な案件が発生したという金正恩総書記の言葉とともに、政治局常務委員会の委員を解任したと伝えていた。

 政治局常務委員会とは、金正恩総書記を筆頭に、崔竜海・最高人民会議常任委員長、李炳哲・中央軍事委副委員長、趙勇元・組織担当書記、金徳訓・内閣総理の5人が務めてきた朝鮮労働党の最高意思決定機関である。

 当初は解任の事実が報じられたのみで、誰が解任されたかも明らかではなかった。ただ、北朝鮮メディアはその後、最高人民会議常任委員会全員会議の開催を報道した際や経済視察のニュースを報道した際に、崔竜海や金徳訓の二人をそれぞれ政治局常務委員との呼称で報じた。

 つまり、先の5人のうち解任されたのは、少なくともこの二人以外の委員ということだ。

 ある韓国政府当局者は、「金正恩の解任はありえず、6月29日の会議の際に、趙勇元・組織担当書記も拡大会議で誰かを批判する姿が確認されていることから、解任されたのは李炳哲・中央軍事委副委員長と見られる」とし、「会議の際、常務委員を解任する案件を議論していると思しき場面で、李炳哲・中央軍事委副委員長だけが投票に参加していなかった」と話した。こうして、解任された人物は李炳哲氏だとみなされるようになった。

 しかし、状況はそうだとしても、李炳哲氏が失脚したとは意外な話だ。