「脱貧困キャンペーン」の高い数値目標を割り当てられた地方政府は、地方財政の中から巨額資金を投入して貧困層の収入を膨らませ、統計数字を水増しして中央政府に報告したのだ。そうした嘘の数値の合算が、「歴史的な奇跡」を生み出した。無論、貧困層には一年限りの豊かさであり、来年以降は元の木阿弥だ。

 地方政府は中央からの圧力で、せっかく「脱貧困キャンペーン」の目標値達成のために巨額の地方財政を投入したのに、今また恒大集団の不動産開発事業を引き継ぐよう求められているが、財布はもうカラッポだ。これでは財政破綻に直面するところも少なくないだろう。もっとも、習近平にとっては想定内の事態で、むしろ恣意的に不動産バブルが弾けるようお膳立てをした節すらある。

GDPの目標達成などは習近平の真の狙いではない

 2018年、習近平は憲法を改正して国家主席の任期制限を撤廃した。2022年の共産党大会で再選されて、異例の第三期目続投に向かう見込みだ。そうなれば、目下、「ポスト習近平」と目されている次世代のリーダーの副首相の韓正、胡春華、上海トップの李強、重慶市トップの陳敏爾らの出世は頭打ちとなり、政治局常務委員の中からも、ダブつく存在が出てくる。今後求められるのは、さらに若手の40〜50代のリーダーたちだ。

 今年末までには、おそらく地方政府の中から、恒大集団の事業を処理しきれず、お手上げ状態で中央政府に泣きつくところが出てくるだろう。習近平は、必要だとおもう地方政府を支援しつつも、トップを引責辞任させて、ダブつく次世代のリーダーたちを「天下り」させるのではないか。

 今後、中国経済が失速することは明らかだろう。だが、習近平の目指すものは、GDP目標の達成ではない。自ら掲げた「共同富裕」政策と理想の国家体制の「再構築」だ。つまり、1960年代の文化大革命時代のような中央集権体制と、自己の「神格化」である。