(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 来年3月に韓国の大統領選挙が行われる。もしもそこで与党「共に民主党」の大統領候補・李在明(イ・ジェミョン)氏が当選すれば、日韓関係ばかりでなく、米韓関係も取り返しのつかないダメージを受けることになりそうだ。

 現在の文在寅大統領は、日韓関係を最悪の状態に陥れた。慰安婦問題に関しては日韓両政府間の合意を覆したし、徴用工問題ではすでに解決済みの個人請求権の問題を再度提起し、日本企業の資産を差し押さえ売却する道を開いた。文在寅政権になってからの日韓の政治関係は、少なくとも日本側からすれば「史上最悪」の状態となった。

 だが李在明氏が大統領になれば、日韓関係はそれ以上の事態に直面することになるだろう。李在明氏は、慰安婦、徴用工という個々の問題ではなく、日韓関係の在り方そのものに“チャレンジ”してくる可能性があるからだ。そうなれば、もはや両国の関係は根本から覆され、国交正常化そのものを否定する議論まで巻き起こされかねない。

批判の矛先は米国にも

 悪化するのは日本との関係だけではなく、米国の関係にも及びそうだ。李在明氏は米国上院議員に対して、日本による大韓帝国の併合には「米国の責任があった」と主張し、「解放後の進駐軍は占領軍だった」と発言している。この考えは、「日米韓」の協調体制そのものを棄損しかねないものだ。

 その李在明氏は、共に民主党の予備選挙で辛うじて過半数を獲得し、党の大統領候補として指名を受けることに成功したが、世論調査を見る限り、野党側の有力候補との競争では先行を許している。そこで形勢逆転を狙う李在明氏は、「反日的発言」を一層激化させている。それらの言葉がどこまで李在明氏の信念から出た発言なのか、あるいは支持獲得のための単なるリップサービスなのかどうかについては、今後の同氏の行動を見る必要があるが、いずれにしても李在明氏が大統領となった場合には、日韓関係は一触即発の状態になる可能性がある。

 いったい李在明氏は何を考え、韓国をどこに導こうとしているのだろうか。