(李 泰炅:北送在日同胞協会会長)

 文在寅大統領は、第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)・首脳級会合の基調演説で、「韓国と北朝鮮の山林協力を通じて、韓半島全体の温室効果ガスを縮小していく」という構想を明らかにしたという。

 2018年の南北首脳会談以降、北朝鮮と国境を接する韓国の坡州や鉄原に「南北山林協力センター」を作り、病害虫の発生予察や診断、共同防除、苗木生産など山林分野における南北の交流を進めている。文在寅大統領は就任当初から、荒廃した北朝鮮の山林の再生を考えていたということだ。

 もっとも、北朝鮮の環境に適応する苗木を研究することは、荒れ果てた生態系の再生と韓半島の温室効果ガスの削減につながるのだろうか。そもそも、北朝鮮の山林はなぜ荒廃したのだろうか。その理由が分からなければ、坡州と鉄原に数十億ウォンをかけて設置した「南北山林協力センター」も絵空事になりかねない。

 北朝鮮で約45年間生きてきた私としては、北朝鮮に対する文在寅政権の見解が実に理解しがたい。数十年間、北朝鮮の言葉しか聞かず、民主化運動に身を置いた文在寅大統領と取り巻きに真実を語りたい。

【関連記事】
◎想像以上の苦境?北朝鮮が再び「苦難の行軍」を決めたのはなぜか(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66401)
◎脱北医師が亡命して驚いた、共産主義を礼賛する韓国左派の無邪気(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65688)
◎「地上の楽園」北朝鮮に渡った在日朝鮮人が語る辛苦(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64819)

 とうもろこしや大根、肉などを、生のままおかずにして食べるという人はほとんどいないだろう。ご飯を炊き、素材を料理するだけでなく、冬の暖房を確保するためにも火が必要だ。これは、ガスや電気だろうが、石炭や薪で火を焚こうが、変わらない。北朝鮮の心臓である平壌でも、既に電気は決まった時間にしか供給されない。地方においては、電気はなくなって久しい。

 私は1960年代から2009年に脱北する時まで、毎年、はげ山になっていく北朝鮮の山林を見てきた。1960年初頭には燃料として石炭が供給されることもあったが、年を追うごとにまばらになり、1990年以降は全面的に燃料を山林に頼らざる得なくなった。

 初めは、雑灌木(経済的価値がない木々)を中心に伐採していたが、燃料需要が増えるとともに、原木の伐採を始めた。生きていくために松の皮をむけば、木は死ぬ。皮がむけた木はすぐに乾燥するため、斧一振りで簡単に倒れる。このようにして、山林がはげ山になる速度は年を追うごとに早くなっていった。地球の気候変動に匹敵するほどの速度で、北朝鮮の山林は数十年の間に真っ裸にされたのだ。

 また、北朝鮮の山林荒廃は食糧問題を解決という側面もあった。