金正恩のみみっちい魚の配給

 12月21日の朝鮮中央通信は、北朝鮮の金正恩総書記が平壌市民に魚を供給(配給)するよう指示した*1と伝えた。

 人民軍の水産部門が捕獲した数千トンの魚を載せた列車とトラックが平壌に到着したという。

 最近では祖父の金日成主席と並ぶ「首領」の称号で呼ばせている絶対権力者にしては、市民に魚一匹ずつ配るとは(シンボリックな話とはいえ)みみっちい話だ。

*1=金正恩氏の父、金正日総書記は死去前日の2011年12月16日に平壌市民への魚供給を指示したという逸話を踏まえ、金正恩氏が金正日死去10年に合わせて同様の指示を出したとされる。食料難は当時も今も変わらないことを逆に天下に知らしめたともいえる。

 金正恩氏は2カ月前、朝鮮労働党創建76年に合わせて開かれた国防発展展覧会では「これは我が国家が到達した国防科学、軍需工業の驚異的な発展の姿と輝かしい展望を誇示する一大祭典だ」と誇らしげに演説した。

 北朝鮮国営メディアによれば、会場には米本土を射程に収めるICBM「火星15」、日本上空を通過した中距離弾道ミサイル「火星12」、9月に発射実験を行った極超音速ミサイル「火星8」などが会場にずらりと陳列されていたという。

 平壌市民と言えば北朝鮮社会のエリート階層。

 その市民にすら満足な食糧が届かないとすれば、平壌市以外に住む一般大衆の食糧事情はどうなっているのだろう。国連の推定だと、北朝鮮国民の40%以上は栄養失調だという。

「輝かしい国防科学」と「首領」から魚一匹を恵んでもらうという食糧事情。なにやら第2次大戦前のどこかの国そっくりな状況に置かれているようだ。