新作戦構想を踏まえた挑戦的・実戦的訓練

陸上自衛隊の新たな作戦構想:
領域横断作戦(クロスドメイン作戦:CDO)

 現在の戦闘様相は、技術の進展を背景に、陸・海・空という従来の領域のみならず、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を組み合わせたものとなっている。

 このような状況において、中国の脅威に対する実効的な抑止および対処を可能とするためには、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を活用して攻撃を阻止・排除することが不可欠である。

 そのため、陸上自衛隊は、従来の海・空自衛隊との統合の能力を基盤として、新たな領域における能力を有機的に融合したCDOを策定している。

 その相乗効果により全体としての能力を増幅させ、個別の領域における能力が劣勢である場合にもこれを克服し、全体としては優位に立ち、わが国の防衛を全うすることを目指している。

 陸上自衛隊は、南西地方の与那国島に沿岸監視部隊と電子戦部隊を、そして、宮古島、石垣島、沖縄本島、奄美大島に島嶼警備部隊、対空ミサイル部隊、対艦ミサイル部隊、さらに電子戦部隊などをパッケージとして配備する準備を進めている。

 また、島嶼部への攻撃をはじめとする各種事態に実効的に対応するため、水陸両用作戦能力を持つ水陸機動団を九州に配備し、即応性を強化している。

 なお、自衛隊における宇宙領域は、航空自衛隊の宇宙作戦群(仮称)が、サイバー領域は陸・海・空共同部隊である自衛隊サイバー防衛隊(仮称)が、それぞれ担任する。

米海兵隊の新たな作戦構想:
機動展開(または遠征)前進基地作戦(EABO)

 米海兵隊が目指しているのは、「機動展開(または遠征)前進基地作戦(EABO)」である。

 この作戦構想は、小規模の海兵隊部隊が隠密裡に作戦上重要な第1列島線沿いの島嶼等に機動展開し、敵の艦艇や航空機等を目標に対艦・対空ミサイル等の火力を発揮して制海(SC)・海洋拒否(SD)の獲得維持に寄与する作戦である。

 任務の完遂に伴って別の場所へ迅速に移動を繰り返すというコンセプトから成り立っている。

 そのため、海兵隊は、同作戦用の4000トン級「軽水陸両用艦(LAW)」を要求している。これに、100人弱の海兵隊員と、兵器、装備、補給品など搭載して上陸、作戦、移動を繰り返す。

 主要兵器として、海洋打撃ミサイル(NSM)と高機動ロケット砲システム(HIMARS)の長距離対艦ミサイルを装備している。

 NSMは射程200キロ以上、HIMARSはGPS誘導ロケット弾「ER-GMLRS」(6発)の場合は射程150キロ、「陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)」(1発)の場合は300キロである。

 防空火器は、中(長)距離用「Medium-Range Interceptor Capability」、短距離用「Marine Air Defense Integrated System(MADIS)」を装備する計画である。

 また、海兵隊は、戦況が順調に進捗すれば、海軍と沿岸戦闘群(LCG)を編成し、「紛争環境下における沿海域作戦(LOCE)」に移行する。

 このように、海兵隊は、敵艦艇の打撃、対潜水艦戦による重要海域の拒否・支配、そして防空・ミサイル防衛などを実施し、専ら海軍のSC・SD獲得維持に寄与する任務役割を負っている。

 他方、米陸軍は、マルチドメイン任務部隊(MDTF)を造成中である。

 その中の戦略砲兵(火力)大隊は、「HIMARS」(射程500キロ以上で1000キロ以上に延伸する計画あり)、中距離ミサイル能力(MRC、射程1800キロ)および長距離極超音速兵器(LRHW、射程2775キロ)を保有している。

 MDTFを第1列島線沿いに配置すれば、中国大陸を十分に射程内に収める能力があることから、海兵隊との任務役割・能力上の競合・重複を避ける観点から棲み分けがなされていると理解される。

 そのため、米陸軍より海兵隊の方に、陸上自衛隊との共同作戦を行う機会を増大させている。